2008 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波分光法による生体関連分子ミクロ水和クラスターの構造と内部運動の研究
Project/Area Number |
18550012
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤竹 正晴 Kanazawa University, 数物科学系, 准教授 (40212188)
|
Keywords | 分子分光学 / 分子構造 / マイクロ波分光 / 生体関連分子 / 水素結合錯体 / 分子内大振幅振動 |
Research Abstract |
超音速ノズルジェット・フーリエ変換マイクロ波分光法により、生体関連分子のミクロ水和クラスターの純回転スペクトルを観測し、その配位構造や水素結合力、更に内部回転などの分子内大振幅振動運動の性質を調査した。先ず、N-メチルアセトアミドー水錯体の観測を行い、配位構造を特定するとともに、メチル基内部回転ポテンシャルの決定を行った。その結果、分子内の二つのメチル基の内部回転障壁V_3は、水分子の配位によりどちらも1割程度高くなることが解った。これは、類似分子のN,N-ジメチルアセトアミドとは逆の傾向であり意外な結果であった。更に、全内部回転ポテンシャル関数のメチル基-メチル基相互作用項も水錯体では顕著な値となり、二つのメチル基の運動が相互に影響し合っていることが明らかになった。このことは、ペプチド鎖の構造変化の情報伝達が水和により促進されるという可能性を示唆しており、極めて興味深い発見であった。また、乳酸メチル-水錯体について、3種類の1:1錯体と2種類の1:2錯体の帰属と解析を行った。その結果、乳酸メチル分子の分子内水素結合に水分子が入り込み新たな水素結合ネットワークを形成する挿入型アイソマーでは、構造変化も大きくOMe基のV_3の値も高くなるが、単純付加型アイソマーではどちらも殆ど変化しないことを明らかにした。また、挿入型錯体の生成には若干の活性化エネルギーが必要であることがわかった。一方1:2錯体では、観測されたものは挿入型であったが、どちらのスペクトルにも水分子内のプロトン交換運動の存在を示唆する分裂が観測された。更に、気・液パルス混合ノズルを新たに開発し、そのノズルが、重水素置換水分子やメタノール錯体の観測に応用しできることを、幾つかの錯体の研究に応用して有効であることを示し、錯体構造の特定に役立てた。
|
Research Products
(8 results)