Research Abstract |
「研究主要テーマ」として,「(A)時間に依存しないHamilton演算子から得られる電子スペクトル,(B)時間依存のHamilton演算子から得られる質量スペクトル」を考えた。 (A)では,主に3種のスペクトル解析((1)第二周期元素(C,N,O,F)を含む物質のKVV'のAES),(2)イオン照射により表面改質したキトサンのXPS,(3)炭素同素体のXPSについて追究した。(1)の成果は,「第二周期元素(C,N,0,F)を含む物質のオージェ電子スペクトルの解析」はオージェ電子スペクトルのエネルギー計算に関して,新算出法を提唱した。実例としてグラファイトのC,GaNのN,SiO_2のO及びLiFのFに関するオージェ電子スペクトルの解析結果を示した。(2)の研究は理大グループとの共同でKr^+イオン照射による表面改質キトサンのXPSスペクトルを量子分子動力学による熱分解した断片物質のXPSスペクトルと対比し,イオン照射後の表面状態を明らかにした。(3)についてはプラズマ蒸着法などで作製されたdiamond-like-carbon(DLC)関してダイヤモンド/グラファイトの相対比を価電子帯スペクトル解析から判別する方法を提唱した。更に同素体の仕事関数はカーボンナノチューブ<グラファイト<ダイヤモンド<C60の順に大きいことを示した。これらは昨年11月下旬の日韓国際会議PSA-07(金沢市県立音楽堂)で報告し,論文として投稿した。 また並行研究として(B)では量子分子動力学プログラムの改良(励起状態を含めたMOプログラムとMDプログラムをドッキング)し,(1)リグニンモノマー及びダイマーと(2)ポリマー(PS及びPET)のSIMSによる質量スペクトルをそれぞれモデル分子の熱分解をシミュレーションし,TOF-SIMSによる有機物の質量スペクトルと対比させた。これらは,昨年11月上旬の国際会議SIMS-XVI-2007(金沢市県立音楽堂)で報告し,論文として投稿し受理された。 その他,量子波束ダイナミクスによる系のダイナミクスを波束の動きで可視化した研究,固体NMRによる相転移物質などの分子ダイナミクスを追究した。
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