2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18550016
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
相原 惇一 静岡大学, 理学部, 教授 (40001838)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 理香 静岡大学, 理学部, 助教授 (50211321)
|
Keywords | 芳香族性 / トポロジー的共鳴エネルギー / 磁気的共鳴エネルギー / 多環式芳香族炭化水素 / 芳香族炭化水素イオン / 結合共鳴エネルギー / 局所的方向属性 / 反磁性磁化率 |
Research Abstract |
最近、芳香族性の磁気的基準が用いられることが多いが、芳香族性の磁気的基準との整合性がしばしば問題になる。相原が誘導した式によると、環電流と関わる反磁性磁化率は個々のサーキットからの寄与の和として表すことができる。サーキットとは共役系内でたどりうるあらゆる環状経路を指す。磁化率の個々のサーキットからの寄与は、そのサーキットに由来する安定化エネルギーと面積の二乗に比例する。このことから、環電流と関わる反磁性の原因は、π電子が個々のサーキットを巡ることにより獲得する安定化エネルギーだということが分かる。 相原は昨年、一連の多環式芳香族炭化水素(PAH)について、個々のサーキットに由来する安定化エネルギーの総和とトポロジー的共鳴エネルギー(Topological Resonance Energy, TRE)との間に非常に良好な相関があることを見出した。この相関にもとづいて、個々のサーキットに由来する安定化エネルギーの総和を磁気的共鳴エネルギー(Magnetic Resonance Energy, MRE)とよぶことにする。そこで、PAHの炭化水素の分子イオンについても、同様の相関があるかどうかを調べたところ、正のTREをもつ分子イオンでは中性分子と同様の良好な相関が認められた。しかし、負のTREをもつ分子イオンでは、MREは系統的にTREより小さくなり、これは磁場の影響下で常磁性の寄与が強調されることを意味する。相原は、本研究テーマと関連した研究課題で、平成18年度日本化学会賞を受賞した。 これとは別に、多環式共役系の周辺に位置するπ結合に対する結合共鳴エネルギー(Bond Resonance Energy, BRE)が、そのπ結合が属する環の局所的芳香族性のよい指標となることが分かった。
|