2006 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン水溶液における液液相分離曲線と液滴および結晶のゼータ電位の決定
Project/Area Number |
18550020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
和泉 研二 山口大学, 教育学部, 助教授 (70260677)
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Keywords | タンパク質 / 結晶成長 / インスリン / 相分離 / ゼータ電位 |
Research Abstract |
生体内での蛋白質の機能を理解するには、蛋白質分子の精密な3次元構造を知ることが重要である。そのためには良質の単結晶を必要とするが、多くのタンパク質において良質な単結晶が得られず、研究遂行上のボトルネックとなっている。そのような中で、近年、蛋白質の結晶成長に関連して、蛋白質溶液が液液相分離を起こすと、タンパク質濃度の高い液滴相が溶液中で形成され、その液滴中で結晶核の形成が素早く開始されるという、液滴経由のタンパク質結晶核生成機構のモデル(Two Step Nucleation Model)が提唱され、液滴をうまく利用すれば、溶液全体の過飽和度をあげることなくタンパク質の均一結晶核形成速度を大きくできることが予測された。結晶核形成の駆動力は過飽和度によって決まるので、低過飽和度の溶液中での核形成速度は小さくなるが、一般に成長する結晶は良質となる。従って、液滴をうまく利用すれば、低過飽和度の溶液中でも効率的に良質の単結晶を育成できる可能性が指摘されている。 本研究課題は、研究代表者が先に発見したインスリンにおける液滴形成および液滴経由の結晶成長に関して、特になぜ液滴が酸性溶液中でのみ形成されるのか、またなぜ液滴内部ではなく液滴表面に結晶核形成が起るのかという問題を理解する上で重要かつ基本的な物性である、1)溶解度曲線および液液相分離曲線の決定(温度依存性およびpH依存性)、2)液滴および結晶のゼータ電位のpH依存性の決定を試みるものである。 平成18年度には、電気泳動装置の調整を行った後、まずインスリン結晶のゼータ電位のpH依存性および粒径依存性を調査した。その結果、インスリン分子の等電点である約pH5.5を境に、インスリン微粒子も低pH側では正に、高pH側では負に帯電しているが、ゼータ電位の変化は低pH側で小さいことがわかった。また、リゾチーム微粒子ではないとされているゼータ電位の粒径依存性が、インスリン結晶にはあることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)