2006 Fiscal Year Annual Research Report
炭素ナノ構造体形成における金属原子内包化モデルの検証
Project/Area Number |
18550022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
阿知波 洋次 首都大学東京, 大学院理工学研究科, 教授 (20002173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城丸 春夫 首都大学東京, 大学院理工学研究科, 助教授 (70196632)
児玉 健 首都大学東京, 大学院理工学研究科, 助手 (20285092)
鈴木 信三 京都産業大学, 理学部物理学科, 助教授 (10226516)
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Keywords | 金属内包フラーレン / フラーレン / 成長モデル / 炭素ナノ構造体 / フェナレニル / 5・6ネットワーク / フラーレン成長機構 / 金属内包化モデル |
Research Abstract |
球殻状のπ電子ネットワークをもつ炭素ナノ物質の物理化学的性質を解明する基礎研究や、その実用化を目指した研究を発展させるためには、その物質を高純度・大量に生成・精製する手法、あるいはその構造を制御する手法を確立させることが重要になる。実際、フラーレンC60に関しては、燃焼法の進歩により今では有機化学の材料物質として大量に使えるようになってきている。一方、他の高次フラーレンや金属内包フラーレンについては、まだその生成過程の制御や効率の良い分離・精製法が確立されていないため、高純度の物質を大量に作り出すことが出来ない状況であり、今後の発展のため大きなブレークスルーが要求されている。本研究では、これまでに申請者を含む首都大学東京研究グループによって蓄積されたフラーレン類、単層カーボンナノチューブ類の生成過程を総合的に理解するために、特に金属内包フラーレンの生成過程における金属原子包化に焦点を絞り、その成長シナリオを解明することを試みた。 本申請者らが提唱している金属内包化形成モデルでは、フェナレニル骨格を有するネットワーク形成が内包化する金属原子との電荷移動相互作用により、部分構造として安定化し、その後、5員環形成が進みフラーレン構造が形成されるものとして考えられている。そこで本研究では、これまで高次フラーレン等の生成過程を調べるために用いてきた高温レーザー蒸発装置を利用して、金属内包フラーレンが生成するときに見られる炭素微粒子や分子種による発光を分光し、その時間展開を観測した。La原子を含むグラファイト試料を用いて発光分布の時間発展を観測すると、La原子含有量の増大とともに、その発光分布や強度に著しい変化が観測され、これによりフラーレン形成に重要な時間帯であるおよそ1ミリ秒以内で、金属原子や炭素クラスターとの会合が発生していることが明らかになった。一方、フラーレン骨格内に内包化が発生しないとされるNiやRh原子を用いて同様の実験を行った結果、こうした原子種では炭素蒸気の冷却過程に大きな変化は生じないことが明らかになった。 これまで報告されてきた金属内包フラーレンのネットワーク構造の詳細について、フェナレニル骨格を有するネットワーク構造を中心に5・6ネットワークの形成が進行すると仮定して、解析を試みると、1)20種類以上の安定金属内包フラーレンは必ずフェナレニル骨格を有すること、2)複数個の金属原子を内包するフラーレン構造は、必ず複数個のフェナレニル骨格を適切な距離を有してもっていること、などが明らかとなり、金属内包化モデルとして有力な候補になりえることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)