2008 Fiscal Year Annual Research Report
複素座標法を用いた原子・分子の共鳴状態およびイオン化過程の理論的研究
Project/Area Number |
18550023
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
薮下 聡 Keio University, 理工学部, 教授 (50210315)
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Keywords | 複素座標法 / 光イオン化 / 共鳴状態 / 自動イオン化 / 形状共鳴状態 / 軌道指数最適化 / 複素基底関数 / 振動数依存分極率 |
Research Abstract |
1.量子力学的共鳴状態は、有限の寿命で崩壊する一時的な準束縛状態である。特に、複素座標法を用いた電子系共鳴状態の計算には、束縛状態と共鳴状態を記述する実数基底と、連続状態を記述する複素数基底が必要である。数値計算を軽減するために、複素数基底の個数を最小限にし、かつ精度を落とさないように、複素数エネルギー固有値に対して、解析的微分法を用いてその複素数軌道指数を最適化する計算方法を開発した。核間距離が比較的長い領域における水素分子負イオンおよび水素分子二電子励起状態について複素軌道指数の最適化に成功した。 2.光イオン化断面積の計算のために、振動数依存分極率について最適化された複素軌道指数の共鳴領域における振る舞いを調べた。昨年度までに、複素基底関数法と振動数依存分極率に対する変分原理を利用した光イオン化断面積の計算法を開発し、光子エネルギー毎に最適化された複素軌道指数を持つ1,2個のGauss型基底関数を用いることで、連続状態の情報が効率良く抽出できることを示した。また、最適化された複素軌道指数は、自動イオン化が起こる領域で特異な振る舞いを示すことを前年度見出した。今回、この原因は、振動数依存分極率のうちの共鳴状態由来の項の重要性が急激に増加することによることを明らかにした。
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