2008 Fiscal Year Annual Research Report
メタシクロファン-1-エンを構成単位とするヘリセン型分子の合成と光化学的特性
Project/Area Number |
18550039
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
大和 武彦 Saga University, 理工学部, 教授 (60136562)
|
Keywords | シクロファン / ヘリセン / 構造特性 / 光化学 / ホトクロミズム / 旋光度の光制御システム / 光駆動型分子認識素子 / 光応答性不斉触媒 |
Research Abstract |
本研究では、架橋芳香族化合物に関する研究の一環として、その剛直なシクロファン骨格を利用して、系統的な研究が全くなされていないシクロファンを構成単位とするらせん状分子に着目し、これらの実用的な一般性の高い合成法を開発し、構造と物理的及び光化学的特性との相関関係を調べることを目的とするものである。本研究により、ラセミ化が全く起こらないらせん状分子の構築のみならず、従来のヘリセン研究における問題点を克服することに成功した。すなわち、現在まで報告例の少ない従来のヘリセン骨格を簡略化したo-ターフェニル骨格をもつシクロファン誘導体を構成単位とするらせん型分子の簡便な合成法を開発し、シクロファン骨格に基づく相互作用、光化学特性を解明することが本研究の特色である。本年度は、一方の架橋鎖に二重結合を導入したベンゾ[2.2]メタシクロファンー1-エン型分子を合成し、原子価異性化による10b,10c-ジヒドロピレン体への可逆的な相互変換に基づく光駆動型らせん状分子を合成し、ヘリセン特有の旋光度の光制御システムを構築を試みた。 本研究で合成に成功したベンゾ[2.n]メタシクロファンー1-エンは分子不斉を持っており、ラセミ体混合物として得られた。そこで、光学分割の可能性の有無をキラルカラムHPLCを用い、評価するとともに、その結果をもとに実際に光学分割を行った。次に、光学分割した各鏡像異性体の熱によるラセミ化反応を行い、ラセミ化速度と架橋鎖nとの関係を系統的に調べた。内部置換基導入によるラセミ化の進行が抑制され、特に架橋鎖nが小さい場合には、完全抑制されることを実証できた。さらに、本系では光照射によりベンゾ[2.n]メタシクロファンー1-エンのらせん構造が平面構造に可逆的に変換できるので、光照射オンーオフにおける旋光度の光制御システムの構築に成功した。本研究成果は光駆動型分子認識素子、光応答性らせん状超分子ポリマー、光応答性不斉触媒の開発への重要な指針を与えるものと確信している。
|