2007 Fiscal Year Annual Research Report
高周期14族元素求核試剤のエナンチオ選択的合成法の開拓
Project/Area Number |
18550044
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
南条 真佐人 Tottori University, 工学部, 准教授 (50302352)
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Keywords | ゲルミルリチウム / シリルリチウム / スタンニルリチウム / 光学活性 / 溶媒効果 / 立体安定性 |
Research Abstract |
炭素と同族元素であるケイ素・ゲルマニウム・スズの化学においては、光学活性体に関する研究例はごく限られたものしかない。前年度までにゲルマニウムを中心元素としたエナンチオ選択的ゲルミルリチウムの合成に成功した。本年度はそれらの光学活性ゲルミルリチウムの立体化学に着目した反応および陰イオン中心元素をスズに置き換えた光学活性スタンニルリチウムの合成を検討した。 光学活性なt-ブチルメシチルゲルミルリチウムとp-アニシルジメチルクロロシランを反応させると、対応するシリルゲルマンが得られた。得られた光学活性なシリルゲルマンを室温でTHFおよびヘキサン中で放置し、その立体安定性を調べた。その結果、THF中では3日で50%eeまでエナンチオマー過剰率が低下するのに対し、ヘキサン中では20日後も78%eeを保つ結果を得た。またゲルミルリチウムとハロゲン化アルキルの反応においても、極性溶媒であるTHF中で反応を行うと電子移動反応が進行し、光学純度が著しく低下した。一方、ヘキサンのような無極性溶媒中ではゲルミルリチウムの光学純度を保ったまま反応が進行し、対応する求核置換生成物を高いエナンチオマー過剰率で得た。このことは、炭素の系とは異なり、光学活性な高周期14族元素を取り扱う際には溶媒の極性が重要であることを示唆している。一方、t-ブチルフェニルメチルスタンナンとブチルリチウムをエーテル中、(-)-スパルテイン存在下で反応させると、対応するスタンニルリチウムが得られた。しかし、光学分割による不斉スタンニルリチウムの単離には至らなかった。このことはケイ素やゲルマニウムと比較して、スズはラセミ化が進行しやすいことを示唆している。 本研究により、光学活性な高周期14族元素化合物の簡便な新しい合成ルートが開拓され、その安定性など基礎的な知見を得られることができた。
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