2006 Fiscal Year Annual Research Report
金属配位酸素原子によって創出される「不斉酸素原子」の安定化
Project/Area Number |
18550059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
三方 裕司 奈良女子大学, 共生科学研究センター, 助教授 (10252826)
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Keywords | 不斉酸素原子 / 金属配位 / 金属錯体 / エーテル酸素 / キラリティー / 不斉配位 / O-グリコシド / S-グリコシド |
Research Abstract |
非共有電子対を2つ有する酸素原子上にキラリティーを発生させることはこれまで非常に困難であると考えられてきた。本研究では,糖連結金属配位子を用い,無機有機複合体中での不斉酸素原子の構築を行う。金属中心と不斉中心とが直接結合している本系では,金属周辺の不斉環境が配位酸素原子のキラリティーによって大きく影響を受けるという点で非常に興味深い。以上本研究計画では,配位子の精密設計を通して,金属配位酸素原子上に発現するキラリティーおよび金属周辺における不斉環境の精密制御の可能性とその限界を明確にし,「不斉酸素原子の発現」というこれまでにない新しい概念を提唱する。 本年度は糖含有配位子の特性について検討を行った。既に,糖分子を有するO-グリコシド配位子を用いて,金属配位酸素原子にキラリティーを誘導し,その立体配置を糖部位の保護・脱保護により制御できることを見いだしている(Inorg.Chem.,45,1543-1551(2007))。本年度の研究では,酸素を硫黄に置換したS-グリコシドを有する配位子を合成し,金属に配位した硫黄原子上のキラリティーの制御に成功した(論文作成中)。さらに,糖分子にとらわれない,より基本的な骨格を有する配位子の設計と合成を行い,エーテル酸素原子の非共有電子対を金属に配位させるために必要な要因について検討を行った(Eur.J.Inorg.Chem.,1143-1149(2007)))。このようにして得られた,酸素原子の金属への配位結合を安定化する要素を抽出し,必要最小限の構造による,酸素原子上へのキラリティー導入を目指す。これにより,「不斉酸素原子」という概念の一般化と適応限界の明確化を計る。
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