2007 Fiscal Year Annual Research Report
磯焼けの原因究明を目的とした沿岸海水中の溶存超微量鉄のスペシエーション
Project/Area Number |
18550067
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松岡 史郎 Niigata University, 自然科学系, 准教授 (10219404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 和久 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (80112291)
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Keywords | 沿岸海水 / 超微量鉄 / スペシエーション / 固相分光法 / 磯焼け / 現場分析 |
Research Abstract |
沿岸域で観測される「磯焼け」の原因の一つとして,陸域から供給される有機鉄錯体の減少が考えられている。ところが試料の保存,超微量溶存鉄の状態別定量の困難さから,この様な議論を行えるほどの信頼性を持った分析値はあまり報告されていない。 本研究では,試料の状態変化を引き起こす可能性の高い煩雑な定量操作が不要で,しかもon-siteでの分析までを視野に入れたできるだけ簡易な装置で行える鉄の酸化状態別定量法を目指し,1,10-フェナントロリン錯生成系を適用した固相分光法による沿岸海水中の溶存超微量鉄(II)の定量法開発を中心に行った。 以下に本年度の成果を示す。 1)感度の増加と検出限界:試料体積をV(cm^3),固相の質量をm(g),単位質量あたりの固相の膨潤体積をv(cm^3/g)とすれば,本法の検出感度はV/mvに比例する。したがってmv値を減少させることで,より少量の試料溶液でも高感度な定量が可能となる。今回,測光系の最適化により,光路長1cm×光路幅0.1cmのマイクロブラックセルを用いての測光が可能となり,前年と比較して測定に必要な試料体積を大幅に減らすことを可能にした。本法の検出感度はイオン強度にも比例するが,海水と同じイオン強度においてはその検出限界は4.3ngであった。また試料溶液は400cm^3まで感度と比例関係にあり,400cm^3の試料溶液を用いれば10ppt程度の溶存Fe(II)まで測定できることが確認された。 2)実試料への応用:人為的汚染源が近くにない場所で採取した複数の沿岸海水を用いて標準添加法による回収実験を行ったところ,いずれの場合も良好な結果が得られた。また100cm^3の試料溶液を用いて溶存Fe(II)濃度を定量したところ,多くの場合その定量値は検出限界(0.043μg dm^<-3>)以下であった。
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