Research Abstract |
本研究では,シリカ表面に吸着させた塩化セチルトリメチルアンモニウムの逆ミセル(以下,これを吸着逆ミセルと称す)の界面相を特異なミクロ反応場として利用して,その表面に界面重合反応によりナイロン-6,6などのポリアミドを合成し,形成されたポリアミド層のナノ構造体を分離の新規なメディアとして活用することをめざした。初年度の基礎的検討によって得た知見をもとに,平成19年度はそのポリアミド層を固定相とするLC分離法への応用に関する検討を行い,以下のような研究成果を得た。 まずo, m, p-ニトロアニソールの分離挙動を調べた。その結果から,ポリアミドのNH部位が親水的であるということを明らかにした。次に,その固定相を親水性の糖類の分離に適用し,LC分離機構について考察を行った。水-アセトニトリル混合液を溶離液として9種類の糖類についてLC分離を行い,溶離液中の水の割合を増加すると,それらの保持時間が減少することがわかった。またLC装置を用いて固定相への水の吸着量の測定も行い,ポリアミド被覆画定相によるLCはシリカゲル固定相による親水性相互作用クロマトグラフィーと同じ分離機構であることを支持する結果を得た。さらに,保持時間からキャパシティファクターを求め,ポリアミド被覆固定相への分配の自由エネルギー変化を見積もった。グルコースを基本骨格とする糖類において,その値がグルコースの数に比例すること,また糖類の水酸基だけの分配の自由エネルギー変化と良い相関関係を示すことから,ポリアミド被覆固定相への糖類の分配において水酸基への水和が大きく関与していると推論した。また,ポリアミド被覆固定相は,その炭素鎖の長さを変えるこ,とによって固定相の親水性の程度を自由に変えることができるという従来のシリカゲル固定相には無い特徴を有することを明らかにした。
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