2006 Fiscal Year Annual Research Report
閾値エネルギー解離質量分析法の開発と生体分子解析への応用
Project/Area Number |
18550085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 健道 独立行政法人理化学研究所, バイオ解析チーム, 先任研究員 (10360611)
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Keywords | 質量分析法 / 閾値エネルギー解離 / 多重極蓄積支援解離 / イオントラップ / 振動励起 / 温度計分子 / 反応経路 / 選択的断片化 |
Research Abstract |
気相イオンの解離(断片化)法に関する新しい方法論である閾値エネルギー解離質量分析法においては、エレクトロスプレイ法等により生成した基底状態近傍の解析対象イオンを、イオントラップ中で緩和な振動励起状態に導いた後に一定時間保ち、最低閾値エネルギーの反応経路生成物へと選択的かつ高収率に導く。本法の開発に際しての予備的検討において、従来型フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析装置のイオン源部六重極イオンリザーバーをイオントラップとして用いた多重極蓄積支援解離(MSAD)実験により、ポリペプチド鎖中のペプチド結合は、アスパラギン酸(Asp)残基のカルボキシ末端側で選択的に切断されうることを見出した。この反応は、Asp側鎖を含む五員環遷移状態を経た低閾値エネルギーの経路を経ると推定される。ベンジルピリジニウム誘導体温度計分子を用いた検討によって、閾値エネルギーが1.5eVおよび1.9eVの二つの反応経路が存在する場合、反応を1.5eVの経路へと定量的に進行させることが可能なことを実証した。MSAD実験における活性化の度合いは、六重極イオンリザーバー内へのイオン蓄積量に依存する。閾値エネルギー選択実験の精度向上を目的として、自作のソフトウエア制御ナノスプレイエミッターを用いてイオン蓄積量をコントロールしながらのMSAD実験を試みたが、ナノスプレイエミッターにおける微小な流量変動が総イオン生成量自体に大きな影響を与えうるため、データの日間再現性は低かった。そこで、MSAD実験によらず閾値エネルギー近傍での解離反応を再現性よく誘起すると同時に実験条件と熱化学パラメーターとの関連付けを容易にするため、市販の四重極イオントラップ型質量分析装置を改造し、イオントラップ加熱型の閾値エネルギー反応装置を試作した。
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Research Products
(1 results)