2007 Fiscal Year Annual Research Report
閾値エネルギー解離質量分析法の開発と生体分子解析への応用
Project/Area Number |
18550085
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 健道 The Institute of Physical and Chemical Research, 物質構造解析チーム, 先任研究員 (10360611)
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Keywords | 質量分析法 / 閾値エネルギー解離 / 生体分子 / イオントラップ / 解離反応経路 / 選択的断片化 / 電子捕獲 / 複合型糖ペプチド |
Research Abstract |
閾値エネルギー解離質量分析法の開発では,エレクトロスプレーイオン化により生成した生体分子イオンを質量分析装置中にトラップした後に解析対象イオンを最小閾値エネルギーの解離反応経路を経る生成物イオンへと選択的かつ高収率に導く測定法の確立を行っている.通常のCID法においてはイオンの活性化により幅色い内部エネルギーの分布が生じ高エネルギー側の裾から高い閾値エネルギーの反応生成物も生成してしまうのに対し,閾値エネルギー解離質量分析法では最小閾値エネルギーの反応経路のみを選択し高収率で生成物イオンに転換する.本法により,検出能の大幅な改善と最小閾値エネルギー反応経路の特定による構造情報取得が可能となる.通常,エレクトロスプレーイオン化の適用対象となる生体分子は多数の解離反応経路を持ち,どの経路の閾値エネルギーが最小となるかはイオンの構造に依存して決まる.解析対象となる中性分子の構造は同じであっても,異なる構造を持つイオンへと導くことができれば最小閾値エネルギーを有する反応経路を変化させられる.つまり,イオンの構造を操作することによって異なった生成物イオンへと選択的に導ける筈である.これを検証するため,電子捕獲によるイオン構造の改変と反応経路の転換を試みた.モデル生体分子として種々の構造要素を有する複合型糖ペプチド等を用い,質量分析装置中にトラップされた生体分子イオンについて,(1)イオン構造を改変することなく解離させた場合と,(2)電子捕獲によるイオン構造の改変(偶数電子系から奇数電子系への転換)を行った後に解離させた場合とにおける生成物イオンを観測し,最小閾値エネルギー反応経路とイオン構造の関係を比較検討した.イオン構造の奇数電子系への改変に起因する反応経路の転換が認められ,最小閾値エネルギー解離質量分析法に電子捕獲を組合せることで反応経路選択の幅を広げられることが示された.
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Research Products
(4 results)