2008 Fiscal Year Annual Research Report
閾値エネルギー解離質量分析法の開発と生体分子解析への応用
Project/Area Number |
18550085
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 健道 The Institute of Physical and Chemical Research, 物質構造解析チーム, 先任研究員 (10360611)
|
Keywords | 質量分析法 / 閾値エネルギー解離 / 生体分子 / イオントラップ / 解離反応経路 / 選択的断片化 / 衝突冷却 / 有機化合物定性 |
Research Abstract |
気相イオン解離に関する新しい方法論である閾値エネルギー解離質量分析法を確立し,構造解析への有用性の検証と微量生体分子解析への応用展開を図るため,反応効率と閾値エネルギー選択性を評価した.本法は,エレクトロスプレイ法等により生成した基底状態近傍の解析対象イオンを緩和な振動励起状態に導きイオントラップ中に一定時間保つことで閾値エネルギーが最低の反応経路生成物へ選択的かつ高収率に導くことを基本原理とする.FT-ICR質量分析装置を用いた実装においては,IRMPD法の赤外光強度と照射時間,トラップ内蓄積時間をそれぞれ変化させることにより反応の制御が可能だが,実用的な秒オーダーのトラップ時間においては反応効率が低く,高感度分析法への展開は困難であった.一方,四重極イオントラップ質量分析装置を用いた実装では,高周波励起されたイオンは高確率でトラップ内のバッファーガスと衝突し,ほぼ100%の反応効率が得られる.その際,高周波励起後の衝突で一旦内部エネルギーを獲得したイオンがthermalなガスとの衝突で再冷却されることが問題となる.すなわち,選択性を上げるためには過剰エネルギーをなるべく小さく保ったまま解離させる必用があるが,反応待ち時間中に衝突冷却により内部エネルギーが閾値以下に低下する.この問題を解決するため,エンドキャップ電極を加熱し間接的にバッファーガスの温度を上げて衝突冷却の効果を薄める方法を試みた.モデル化合物を用いた検討の結果,トラップを500K程度まで加熱しつつ10秒程度までの反応待ち時間をとった場合,従来法に比較して有意に低い励起状態での解離が可能であることが分かった.本研究の結果,実装の比較的容易な四重極イオントラップを用いて,閾値エネルギー解離法を広範な低分子有機化合物の定性法へと応用展開していくための基盤を構築できた.
|
Research Products
(2 results)