2006 Fiscal Year Annual Research Report
環境負荷低減を目的とする触媒的不斉ボロヒドリド還元反応系の再構築
Project/Area Number |
18550099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 徹 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40296752)
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Keywords | 合成化学 / 触媒・化学プロセス / 有機工業化学 / コバルト |
Research Abstract |
光学活性ケトイミナトコバルト錯体による触媒的不斉還元反応は,安価で取り扱いやすい水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として,広い適用範囲,高い触媒効率が実現されることから,光学活性第2級アルコールの合成法として期待されている。高い不斉収率の実現にはクロロホルムが必須であるが,実用的観点から環境負荷を考慮し,ハロゲンフリーの検討を行った。分析的手法と計算化学的手法による反応機構の検討から,クロロホルム由来のジクロロメチル基がコバルトに結合した中間体が反応に関与し,クロロホルムは単なる溶媒ではなく,コバルト錯体の活性化剤であることが示された。還元剤由来のナトリウムカチオンが基質のカルボニル基の固定化に重要であるから,ベンゼン環のオルト位のハロゲン原子によるキレーション効果を期待して,ベンゾフェノン類のボロヒドリド還元反応を試みた。水素化ホウ素ナトリウムに代えて水素化ホウ素リチウムを還元剤とすると選択性が向上し,オルト位がフッ素原子で置換されたさまざまなベンゾフェノン誘導体から高収率・高エナンチオ選択的にベンズヒドロール類が得られた。 一方,触媒量のクロロホルムを添加することによりハロゲンフリー溶媒中の不斉還元の実現を目指した。最適化の結果,THF溶媒中5mol%のクロロホルムの添加によってハロゲン系溶媒での結果に匹敵する収率・不斉収率の実現に成功し,ジカルボニル化合物を含むケトン類,イミン類への幅広い適用が可能となった。さらに完全ハロゲンフリー反応系の確立を目指した。コバルトのアキシャル位に結合したジクロロメチル基に相当する中間活性体を想定し,コバルト錯体とジアゾ酢酸エステルから調製されるコバルトカルベン錯体を触媒とする不斉ボロヒドリド還元反応への展開を試みたところ,高収率・高エナンチオ選択的に対応するアルコールが得られ,完全ハロゲンフリー溶媒中の反応開発に成功した。
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