2007 Fiscal Year Annual Research Report
環境負荷低減を目的とする触媒的不斉ボロヒドリド還元反応系の再構築
Project/Area Number |
18550099
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 徹 Keio University, 理工学部, 教授 (40296752)
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Keywords | 合成化学 / 触媒・化学プロセス / 有機工業化学 / コバルト |
Research Abstract |
光学活性ケトイミナトコバルト錯体による触媒的不斉還元反応は,安価で取り扱いやすい水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として,広い適用範囲,高い触媒効率が実現されることから,光学活性第2級アルコールの合成法として期待されている。昨年度は,分析的手法と計算化学的手法による反応機構の検討から,溶媒の完全ハロゲンフリー化に成功した。今年度は,中心不斉の他に軸不斉の構築への展開について検討した。軸不斉を有するビアリール化合物は、不斉配位子として広く用いられる他、強い薬理活性を示す天然物の重要な骨格としても数多く見いだされる。軸不斉ビアリール骨格の合成法は、主に不斉ビアリールカップリングを用いる反応が報告されているが、立体的にかさ高い芳香環同士の炭素-炭素結合形成と軸不斉制御を同時に行うため、高温条件が必要であり、選択性が不十分であったり、基質一般性が低いなどの改善の余地があった。一方、ビアリールラクトン類の二つの芳香環は、エステル結合で架橋されているため、MおよびPの軸不斉を有するビアリールラクトン類の異性化障壁は小さく、両者の平衡は非常に速いと考えられる。このとき、求核剤が一方の軸不斉異性体を認識してラクトン環を開裂させれば、動的速度論的分割により軸不斉ビアリール骨格を効率的に合成できる。この戦略によりBINAL-HやCBS還元剤を用いるビアリールラクトン類のエナンチオ選択的還元的開環反応による合成がBringmannにより報告されているが、等量のキラルなヒドリド還元剤が必要であるとされてきた。本研究では、光学活性ケトイミナトコバルト錯体を用いる触媒的ボロヒドリド還元反応により、動的キラルなビアリールラクトン類の還元を行ったところ、高収率・高立体選択的に軸不斉を有するアルコール体が高い不斉収率で得られることを見出した。
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Research Products
(4 results)