2006 Fiscal Year Annual Research Report
放射光を用いた動的繊維構造解析によるキトサンの錯体形成機構の解明
Project/Area Number |
18550104
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
野口 恵一 東京農工大学, 機器分析センター, 講師 (00251588)
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Keywords | X線回折 / 結晶解析 / 放射光 / 相互作用 / 水素結合 / 多糖 / キトサン / 繊維回折 |
Research Abstract |
平成18年度は、3シフト(24時間)の配分を受けたビームタイムを利用して(SPring-8のBL38B1ビームライン)、臭化水素酸錯体、硝酸錯体、乳酸錯体、塩化亜鉛錯体の繊維回折データの収集を行った。その結果、実験室のX線源を用いて測定したデータに比べ、回折強度の弱い反射についても精度の高い強度データを得ることに成功した。特に、臭化水素酸錯体は、実験室で通常利用することができるX線源であるCuKα線(波長1.5418Å)、MoKα線(波長0.7107Å)のいずれを使用した場合でも、臭素原子によるX線の吸収が大きいため鮮明な回折像を得ることができなかったが、波長0.98Åの放射光で測定を行った結果、高分解能でS/N比の高い繊維回折像が得られた。 本年度放射光を利用して収集したX線回折データに基づき、キトサン臭化水素酸錯体構造解析を行ったところ、先に我々が決定したキトサンヨウ化水素酸錯体の結晶構造と同形であることが明らかになった。すなわち、錯体結晶中には結晶学的に2種類の臭素イオンが存在し、それら臭素イオンは互いに約5Åの間隔でキトサン分子の分子鎖軸方向と平行に配列し、臭素イオンによるカラムを形成していた。一方の臭素イオンはその周囲にある3本のキトサン分子鎖のアミノ基と水素結合をしており、他方の臭素イオンは1つのアミノ基と2つのキトサン分子の6位水酸基との問に水素結合を形成し結晶構造を安定化していた。さらに、これらの相互作用に加え、キトサン分子鎖間にC-H…0の弱い水素結合が存在している可能性が示唆された。 現在、平成18年度に強度データを収集した他の錯体について結晶構造解析を進めるとともに、錯体形成過程における回折像変化に関するこれまでの実験結果、および結晶構造解析結果をもとに、錯体形成過程の構造変化について検討を進めている。
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[Journal Article] 1,6,11,16-tetraoxacycloeicosane-7,10,17,20-tetraone2006
Author(s)
K.Noguchi, H.Kondo, Y.Ichikawa, J.Washiyama, K.Okuyama
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Journal Title
Acta Crystallographica Section C C62
Pages: o528-30