2008 Fiscal Year Annual Research Report
高分子ナノカプセルにおけるガラス転移ダイナミックスの特性化
Project/Area Number |
18550107
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
佐々木 隆 University of Fukui, 工学研究科, 准教授 (50242582)
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Keywords | 高分子構造・物性 / ガラス転移 / ナノカプセル / 示差走査熱分析 |
Research Abstract |
1. 架橋したポリメタクリル酸メチル(PMMA)をシェルとする棒状カプセル微粒子のガラス転移ダイナミックスの検討を行った。その結果、シェルPMMAのガラス転移温度(Tg)は対応するバルク試料よりも高く、この傾向は架橋度の増大とともに強くなることがわかった。また、Tgにおける動的特性長は架橋度の増大とともにわずかに減少することがわかった。これらの結果は架橋の不均一性、シェル内での特異なconfiguration、コア/シェル界面での強い相互作用などに起因すると考えられる。得られたTgと特性長のデータをさらに多層モデルに基づいて解析し、界面近傍でのTgの評価を行った。以上の結果は架橋ポリスチレンシェルの結果と類似していることがわかり、棒状カプセル微粒子のシェルの熱物性の普遍的な性質が解明できた点で有意義な成果が得られたと考えられる。 2. 棒状ナノカプセルの重合過程について検討を行った。その結果、ポリスチレン/ジビニルベンゼン系の重合では、乳化重合と懸濁(バルク)重合が競合して起こっていることが明らかになった。これらの割合は乳化剤の濃度に大きく依存することもわかった。 3. ベシクルテンプレート法によるナノカプセルの合成を試みたが、光重合の過程で問題が生じ、カプセルの合成を確認することができなかった。そこで、別法として交互吸着法と架橋反応を組み合わせてキトサン系高分子をシェルとする棒状ナノカプセルの合成を行い、厚さ20〜50 nmのシェルを形成させることができた。この方法を応用すると、さらに多種類の高分子ナノカプセルについてそのガラス転移ダイナミックスを検討することが可能であり、この点で大きな成果が得られた。
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