Research Abstract |
本研究では,可逆的なボロネートエステル化反応に着目し,以下の項目で成果を得た。 1)アリザリン系色素をレポーターに用いる自己組織型蛍光アニオンセンサー 縮合リン酸類は生体内で実に多様な役割を果たしており,その検出は臨床化学的なニーズがある。われわれは,化学センシングに必要な被検査物質認識部位としてジピコリルアミン亜鉛錯体共役型フェニルボロン酸(1・Zn)を新規に合成し,レポーター部位としてカテコールの部分構造をもつアリザリン系色素を組み合わせた自己組織センサーシステムを構築した。そのシステムは、MeOh-10mM HEPES(1:1v/v,pH7.4)中,縮合リン酸イオン類の添加に対して,選択的な蛍光応答を発現したその序列は,ピロリン酸イオン>アデノシン三リン酸イオン>アデノシン二リン酸イオン>アデノシンモノリン酸イオンとなった。プロトン核磁気共鳴分光法(HNMR)を含む構造化学的解析の結果,1・Znとアリザリン系色素との会合体構造が被検査物質(ピロリン酸イオン)添加で変化し,蛍光応答を示すに至ったものと考察した(論文投稿中)。また,以上の知見をもとに検討した関連システムは,フィチン酸イオンに対してレシオ検出を可能にした。一連の自己組織アニオンセンサーシステムに関して特許出願をおこなつた(特願2008-207508)。 2)動的分子カプセル 昨年度から引き続き,ホウ素の化学的性質を用いた動的分子カプセルの創製と性質について検討を加えた。拡散NMR実験を含む詳細な検討から,メタノール-アセトニトリル(4:1v/v)中,cis-ジオール部位を持つ半球分子cyclotricatechylene(1)とボロン酸部位を持つ半球分子hexahomooxacalix[3]arene(2)は,互いに何ら相互作用を発現しないが,化学刺激剤としてEt_4NAcO(3当量)を加えたところ,自発的なカプモル化がおこり,そのカプセル内部にひとつのEt_4Z^+が包接された。その際AcO^-がホウ素に供与結合をおこすが,その後直ちにソルボリシスを起こすことが明らかになった。一方,化学刺激剤として用いるイオンペアの性質に依存したカプセル化現象を起こし,かつカプセルの開裂・再カプセル化が溶液のpHを変えることによって誘導できた(Y.Kubo, et al.,J,Am.Chem.Soc.,2007,129,15126-15127)。
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