Research Abstract |
平成19年度は,18年度に引き続き,世界最古の植物で藍藻と同種の紅藻,イタリアの高温酸性温泉に生息するシゾン(Cyanidioschyzon merolae 10DおよびCyanidium caldarium)を用いて1-Arylethanol誘導体を変換したところ,1-(4'-Chlorophenyl)ethanolからは,高い収率(95%),高選択性(91%ee)で(S)-アルコールが得られた。Phenyl基に置換基を有しない1-Arylethanolの場合,74%の収率,35%eeで(S)-アルコールに変換された。6員環の可動性を検討するために2-Methylcyclohexanone,trans-およびcis-2-Methyl-cyclohexanolについても検討した。さらに数種類のインドール誘導体の開裂反応について,既に我々のグループで開発した酸化能力の高い生体触媒,ムレスズメの植物細胞(Caragana chamlagu)とペルオキシダーゼを有する日本わさび(Wasabia japonica)に過酸化水素を添加して行なったところ,酸化開裂が起こり相当するKetoamideが生成することが判った。さらに2,3-Dimethylbenzofuran,BenzofuranおよびBenzoxazoleの場合も開裂した生成物が得られた。 乾燥した環境に適合可能な微細藻類Nostoc mintumを用いて環境ホルモン様物質として知られているビスフェノールAの塩素誘導体の分解を検討したところ,分解した化合物3,5-Dichloro-4-isopropenyl-phenolとその前駆体3,5-Dichloro-4-(2-propanol)phenolが得られることも判明した。 分担者中村は,以下のような新たな結果を見出した。1.光学活性化合物の両鏡像体を一種の微生物を用いて合成した。2.植物培養細胞を用いてラセミ体の選択的酸化を行った。3.芽生え植物が生体触媒として有用であることを見出した。また分担者国吉は,沖縄の褐藻類から抽出した臭素を含有する天然物Aplysistatinの微生物変換(Rhinocladiella atrovirens)を行ない,ヒドロキシル基が導入された化合物が得られることを見出した。
|