2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18550146
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 好幸 東北大学, 大学院薬学研究科, 助教授 (70333797)
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Keywords | DNA / 水銀錯体 / NMR / チミン塩基 / チミン-水銀-チミン塩基対 / 構造解析 / スピン結合 / 安定同位体標識 |
Research Abstract |
近年、金属キレーターを核酸に導入して、金属イオンを介した"非天然"塩基対形成をおこなう化合物の開発が盛んに行われている。一方我々の研究室においては、"天然"の核酸塩基であるチミンが水銀イオンを介して塩基対形成(T-Hg^<II>-T)をする可能性を指摘してきた。本年度はこの天然核酸塩基チミンによる、特異な塩基対形成が実際に起きているかどうか、及び、起きているならばその塩基対様式はどのような構造であるかに焦点を絞って研究を行った。まずは金属イオンの結合部位と予想されるチミンの3位窒素原子を^<15>N標識したDNAオリゴマーを化学的に調製した(dCGCGTTGTCC・dGGACTTCGCG:下線部は^<15>N標識チミン残基)。その結果、T-Hg^<II>-T塩基対を組むと期待される残基間に^<15>N-Hg^<II>-^<15>N共有結合に由来するJ-couplingが観測された(Tanaka et al., J.Am.Chem.Soc.,2007,129,244-245)。この実験結果は二重らせん構造中の向かい合うチミン残基が水銀核によってクロスリンク(共有結合)されたことを示す直接証拠である。即ち、T-Hg^<II>-T塩基対の存在を世界で初めて証明した。また、その塩基対様式はこれまでの高分子天然型核酸塩基では見られたことのない、水銀核を介した共有結合による塩基対であることが判った。翻ってこのような様式で核酸塩基同士を水溶液中でクロスリンクしうる金属イオンは論文上では未だ報告例がなく、水銀イオン特異的認識を可能にしている要因であると結論できる。このように本研究により、チミン塩基が水銀イオントラップのための機能素子として優れた性質を有していることが証明された。
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Research Products
(7 results)