2006 Fiscal Year Annual Research Report
ポリマー・溶媒分子化合物の制御による結晶の配向性と新規機能の発現
Project/Area Number |
18550192
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
板垣 秀幸 静岡大学, 教育学部, 教授 (10159824)
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Keywords | シンジオタクチックポリスチレン / デルタ型包接結晶 / ホスト・ゲスト / ポリマー・溶媒分子化合物 / 偏光蛍光 / フィルム角度依存性 / 光変形 / 物理ゲル |
Research Abstract |
ポリマー・溶媒分子化合物の安定性・配向性に着目し、以下の成果を上げた。(1)光照射による物理ゲルの刻印現象の解明と応用化について調べ、シンジオタクチック(s-)およびイソタクチック(i-)ポリスチレン(PS)の物理ゲルにおいて、側鎖フェニル基が吸収した照射光エネルギーが、無輻射失活の際にポリマー・溶媒分子化合物中の溶媒分子に熱エネルギーとして移動し、その結果、溶媒分子の運動が高まり、分子化合物が解離し、ゲルネットワークが崩壊するということを定量的に確認した。(2)ポリマー・溶媒分子化合物の形成によってゲルを形成する物理ゲルの場合は、超音波照射によって、ゲル融解温度以下の発熱しかなくても、ゲルが崩壊しシャーベット状になること、この状態で冷却すると再びゲル化することを確認した。こうした結果は、s-PS・i-PSのポリマー・溶媒分子化合物の特性を調べる上で重要な情報となった。(3)様々なポリマー・溶媒分子化合物の安定性を明らかにし、系統的な情報を得るために、香料分子として知られるシトラールやリモネンなどのs-PSゲルの温度-濃度相図を求め、分子化合物中のスチレン単位と溶媒分子の比率を明らかにした。さらに、s-PSデルタ型結晶の制御をポリマー・溶媒分子化合物の観点から明確にすることを目指し、(4)ナフタレン誘導体をゲストとして包接するs-PSデルタ型結晶フィルムを作製し、延伸による結晶配向性の制御を試み、フィルムのセット角度を励起偏光に対して回転させ、ゲスト分子の偏光蛍光強度変化を調べ、デルタ結晶がフィルム全体にわたって高次に配向し、その結晶中に包接されたゲスト分子自体がフィルム中に高次に配向するフィルム作製を明確にした。この測定法から、ゲストの分子軸を三次元的に確定することにも成功した。以上の結果は、ゲスト分子による新機能実現の礎となるものと期待される。
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