2008 Fiscal Year Annual Research Report
水溶性ポリペプチドゲルの形状記憶能と膨潤・収縮機構に関する研究
Project/Area Number |
18550193
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
猪股 克弘 Nagoya Institute of Technology, 大学院・工学研究科, 教授 (80232578)
|
Keywords | 高分子ゲル / 水溶性ポリペプチド / 形状記憶 |
Research Abstract |
本研究課題では、水溶性のポリ[N^5-(2-ヒドロキシエチル)L-グルタミン](PHEG)の側鎖に、結晶化を起こすような長鎖アルキル基(炭素数n)を導入した、PHEG-graft-Cnの化学架橋型のゲルを研究の対象とし、アルキル鎖の結晶化による形状記憶能の発現を目指すものである。 本年度は、結晶性のオクタデシルアミン(ODA)を側鎖に導入したPHEG-graft-C18を、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)で架橋したゲルについて検討した。出発物質であるポリ(γ-ベンジル L-グルタメート)(PBLG)に対してODA、HMDAを各々3等量加えてアミノリシス反応させ、その後ベンジル側鎖をヒドロキシエチル基に置換し、水で膨潤させて試料を得た。ODAの導入率は数%で、仕込み量に比較して低いことが分かった。このゲルは、60℃で圧縮変形した後5℃に冷却すると、負荷を除いた後も変形を固定化した。その後30℃まで昇温すると、自発的に元の形状の95%まで回復し、形状記憶能を有することが分かった。 この試料の低温での広角X線回折および示差走査熱量測定を行ったが、ODA鎖の結晶化を確認することはできなかった。しかし温度を変化させて行った動的粘弾性測定の結果から、低温で貯蔵弾性率が大きく増加する傾向が見られた。また、同様の形状記憶試験や粘弾性測定を、ODAを加えないで調製したゲルについても行ったが、形状記憶能は示さず、低温での弾性率の増加量も小さかった。以上の結果から、本研究で取上げたようなポリペプチドハイドロゲルでは、形状記憶能を示すためには結晶性側鎖が必要であり、実験的には確認できなかったが、おそらくはその結晶化が低温での変形の固定化に寄与していると考察した。
|
Research Products
(4 results)