2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18560039
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
篠田 博之 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40278495)
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Keywords | 視覚 / 解像力 / 視力 / ボケ順応 / 中枢 / 大脳 |
Research Abstract |
かすみ(Haze)フィルターを用いて視野全体にボケ画像を呈示し,視覚系解像力への影響を検討した.フィルター越しに観察している時は,像がぼけ視力は低下するが,しばらくするとボケ画像への順応効果により視力は多少回復し,ある値に落ち着く.さらにボケ画像を観察し続けた後,フィルターを外す.当然,視野は鮮明になるため視力は元の値に戻るが,実際はボケ順応による視力回復分だけ通常よりも高くなる. 実験1では,Haze値(全透過光量に対する拡散透過光量の相対値(%))が9.7%と18.9%である2種類のかすみフィルターを用い,視力変化過程を比較した.白色背景上に黒字のランドルト環を上下左右4方向のいずれかに呈示し,被験者はその方向を応答する.下降系列の極限法により最小分離閾を決定し,その逆数を視力とした.視力は1分間隔で継続的に求め,視力を測定していないときは,同じランドルト環を観察しながら待機した.フィルター着用前の5分間,着用した状態で40分間,フィルター取り外し後15分間の計1時間にわたって視力測定をした.どちらのフィルターを着用した場合でも,上述したような視力変化が観察され,とくに,フィルター着用後約15分でボケ順応による部分的な視力回復が完了した.フィルターを外した直後に視力は通常視力よりも高くなり,5分間かけて元の視力に戻った.フィルターのHaze値が高いほど,取り外し後の視力上昇は大きく,ある被験者では通常1.1の視力が1.5にまで上昇した. 実験2ではHaze値18.9%のかすみフィルターを着用する時間を3-30分と変えた.フィルター着用中のボケ順応はほぼ15分で完了するが,それ以降30分,40分と着用することにより,フィルター取り外し後の視力上昇はさらに増大した. 以上から,通常得られる視力は,眼球光学系のハードウェアによって決まる空間解像力の限界値ではなく,中枢によって,その限界値よりもいくらか低く設定されていることが示された.
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