2006 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物における磁気および熱電応答の理論的研究
Project/Area Number |
18560043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
小椎八重 航 仙台電波工業高等専門学校, 助教授 (20273253)
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Keywords | 熱起電力 / ダブルペロフスカイト / パイロクロア格子 |
Research Abstract |
我々は,遷移金属酸化物に代表される強相関電子系に対し,電子がイオン内で持っていた自由度(スピン及び軌道)を伴った伝導現象を理論的に調べ,固体の熱電応答を利用した熱電材料開発の新たな指導原理の構築を行ってきた.我々が導いた,強相関電子系の高温でのゼーベック係数の一般式は次のとおりである: Q=-(k_B/e)lng_e+(k_B/e)lng_h-(k_B)ln[n_h/(1-n_h)],(1) ここで,n_hはホール濃度を示し,g_eおよびg_hは電気伝導に関するイオンのうち正孔を含むものと含まないものの縮退度である.その縮退度は,スピンと軌道自由度により決まる.すなわち(1)式は,内部自由度(スピン及び軌道)を引きずりながら結晶内を伝播する電気伝導(電荷の流れ)に伴うエントロピー流が,熱起電力(ゼーベック効果)を与えていることを示している. 複数の遷移金属を含む化合物には,それぞれの遷移金属単体を含む化合物の特徴の組み合わせ,あるいは相乗効果による熱電特性の向上が期待される.我々は,複数の遷移金属を含む電子系の熱電応答を調べた.我々が導いた熱起電力の理論式は複雑な形を取るが,キャリアー濃度を50%に設定すると,その表式は,各遷移金属単体を含む場合の熱起電力の理論式(1)の平均となることが明らかとなった.これは,電子の内部自由度のうち,スピンと軌道自由度に起因するエントロピー流が熱起電力を与えることの現われである. また,フラストレーションを含む典型的な系である,三角格子,篭目格子,そしてパイロクロア格子の電子状態を理論的に調べた.量子モンテカルロ法を用いた数値シミュレーションの結果から,フラストレーション効果による磁気揺らぎの増大の様子が明らかになった.また,パイロクロア格子を含む遷移金属酸化物の電子状態を記述する有効ハミルトニアンを導出し,フラストレーション効果を理論的に調べた.
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Research Products
(3 results)