2008 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物における磁気および熱電応答の理論的研究
Project/Area Number |
18560043
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小椎八重 航 The Institute of Physical and Chemical Research, 交差相関理論研究チーム, 基幹研究所研究員 (20273253)
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Keywords | 熱電応答 / 散逸 |
Research Abstract |
固体の熱電応答では,熱や電気の伝導はエネルギー散逸と共にあり,平衡から離れた電子状態の緩和過程の理解は,常に問題の中核をなしている.本研究では,強相関電子系における磁性と熱電応答の関係を調べるため,電子系と局在スピンが結合した模型の励起状態の緩和過程を数値的に調べた.この模型の特徴は,量子力学的な自由度(電子)と古典力学的な自由度(局在スピン)の運動を,厳密に調べることが可能な点にある. 計算結果から以下のような振る舞いが明らかとなってきた:励起状態として,空間的に一様な電子分布を伴う固有状態を用意する.時間の経過と共に空間的に非一様な状態が成長していき,ついには局所的に励起エネルギーが集中した状態が現れる.この局在状態を利用して,系の励起状態は基底状態へ向けて大きく推移していく.この緩和過程は,局在スピンの運動と共にあり,エネルギーの空間的な集中は,局所的な局在スピンの大きな運動と密接な関係がある. また,電場勾配や温度勾配に対する系の緩和過程についても,数値的研究を行った.温度の効果は,揺動散逸定理を満たすように,古典的な自由度である局在スピンの揺らぎとして導入できる.励起された電子はエネルギーを伴い運動していく.また,この運動にはエネルギー緩和も伴う.このエネルギー緩和,すなわち励起状態がら安定な状態の遷移にはやはり,局所的な局在スピンの大きな運動が重要な役割を果たすことが明らかとなった.
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Research Products
(8 results)