Research Abstract |
宇宙工学,ロボット工学及びナノ技術という重要な工学分野からの問題を取りあげ,力学系理論を応用して,伝統的な方法では困難である革新的な研究成果を得ると共に,工学分野における力学系理論の重要性をさらに明らかなものとした.具体的には,宇宙ロケットの軌道設計,2足歩行ロボットの動的挙動の解明および原子間力顕微鏡の新しい機構の提案を行った.まず,宇宙ロケットの軌道設計では,前年度までに提案した,ホモ/ヘテロクリニック軌道および安定/不安定多様体の数値計算法を用いて,地球から月へ飛行する宇宙ロケットのモデルである制限3体問題および太陽の影響を考慮した制限4体問題における系の相空間の力学的・幾何学的構造を調べ,宇宙ロケットのより低コストの遷移軌道を設計した.また,2足歩行ロボットでは,前年度までの研究成果を踏まえ,力学系理論に基づいた安定解析および分岐解析を行って,腰部と踵部にモータが取り付けられ駆動される,膝に関節を持たないコンパスモデルの動的挙動を明らかにした.さらに,原子間力顕微鏡では,タッピング・モードにおいて,カオス制御の手法を修正して適用することによりマイクロ・カンチレバーの振動を制御し,試料表面の測定を行うという測定機構が優れていることを理論および数値シミュレーションにより示した.このように,本年度の結果により,本研究で得られた成果をいよいよ実際的な状況に応用する段階へと進展することが可能となった.
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