2008 Fiscal Year Annual Research Report
高速多重極子展開法に基づく価格評価法の高度/非金属デリバティブへの拡張の研究
Project/Area Number |
18560058
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 有作 Nagoya University, 工学研究科, 准教授 (20362288)
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Keywords | 数値解析 / 金融工学 / オプション / 電力デリバティブ / ポートフォリオ最適化 / 価格評価 / 高速ガウス変換 / 並列計算 |
Research Abstract |
本研究では,多資産に依存するデリバティブ,電力デリバティブなど,価格を求める公式が存在しない複雑な派生証券について,高速・高精度に価格を計算するための数値計算手法と,それに基づくポートフォリオ最適化手法の開発を目的とする。平成20年度は次のような研究成果が得られた。 (1)価格計算のための連立線形常微分方程式に対する高並列な数値解法の開発 デリバティブの価格計算に現れる放物型偏微分方程式を,空間変数のみを離散化して,大規模連立線形常微分方程式として解く手法を検討した。本手法では時間方向を離散せずに解析的に解き,その際に必要となる行列の指数関数をクリロフ部分空間法を用いて近似的に計算する。本手法を実装し,モデル問題を用いて従来から使われている差分法と比較した結果,求められる解の精度が高いほど,本手法のほうが高速になるという結果が得られた。また本手法は並列化に適しており,7プロセッサで5倍程度の加速が得られることが示された。 (2)電力取引に関する最適化手法の高速化 電力取引では,発電用燃料調達のコストとリスクを考慮しつつ電力価格を決定することが必要であり,そのため燃料の在庫管理計画が重要な課題となる。我々はこの問題に対して動的計画法に基づくアルゴリズムを提案していたが,実問題で数時間程度の計算時間がかかるため,実用化に向けて高速化が求められていた。本年度は本問題に対し,分枝限定法に基づくアルゴリズムを開発した。本アルゴリズムは,問題によっては動的計画法に比べて数百倍の高速化が可能であり,実用化に向けて大きな進展が得られた。本成果は今後,電力デリバティブの価格付けの基礎として役立てる予定である。
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