Research Abstract |
近年,航空宇宙分野をはじめ,自動車,土木,建築,医療などの広範な産業分野において,PZT素子や光ファイバーなどを用いたSHM(構造ヘルスモニタリング)システムが注目されている.特に,PZT素子を用いたSHMシステムでは,ラム波と呼ばれる弾性波を利用することによって,構造材料に生じた損傷を効率的にモニタリングできることが知られており,国内外の多くの研究機関で基礎研究が進められている.しかし,これまでの研究を通じて,一般的なPZT素子では長期使用時の圧電特性の劣化が無視できず,このことが損傷検出精度に重大な影響を及ぼすことが明らかになっている.そこで,本研究では,長期にわたって安定した圧電特性を維持できる耐久性に優れたPZT素子および素子の劣化を補完し被測定物の損傷を正確に同定できる信頼性に優れたSHMシステムを開発することを試みている.平成18年度は,主として,(1)PZT素子の圧電特性劣化メカニズムの解明,(2)感度変化の少ないPZT素子の開発に重点をおいて研究活動を行い,平成19年度は,主として,(3)自己補償型システムの開発を行った.(1)および(2)については前年度報告済みであり,(3)に関しては,最初に,動的陽解法による数値解析を用いて,PZT素子の感度劣化の有無が損傷同定精度に及ぼす影響について検討を行った.次に,PZT素子の感度劣化を補償するためのデータ処理方法を開発することを試みた.その結果,近接する複数のPZT素子の出力信号を解析することによって,PZT素子の感度劣化を定量的に決定することができ,損傷同定のための基準出力波形を逐次更新することによって,検査対象物の損傷を精度よく同定できることが示唆された.
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