2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18560117
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
大西 直之 中部大学, 工学部, 教授 (60201977)
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Keywords | X線多層膜 / イオンビームスパッタ蒸着 / X線反射率 |
Research Abstract |
本研究は、次世代X線計測用光学素子の製造に必要となる、原子スケールで平滑な金属・非金属の超薄膜をナノメーター周期で積層させた多層膜を製作し、これによって、短波長のX線(硬X線)に対して高い反射率を有する、高精度のX線反射多層膜の開発を行うことを目的とする。平成18年度においては、現有のイオンビームスパッタ成膜装置の高精度化による成膜プロセスの改善を行なった。 イオンビームスパッタ蒸着はマグネトロンスパッタに比べて蒸着材料の自由度が大きく成膜時の真空度も高いなど、研究開発用途に適した利点を有するが、高精度多層膜の成膜にはイオンビームやガス流量の高度な安定化が求められる。そこで、現有装置にシャッタ機構・マスク機構・ビーム安定化装置などの改良を施し各種成膜条件を検討した。 積層周期が約4nmで積層数が50周期のPt/C(白金/炭素)多層膜を製作した。透過電子顕微鏡による断面観察の結果からはPt/C多層膜にはナノメーターレベルのサイズの欠陥は見られず、均一で良好な成膜が実現されていることが確認された。しかし、斜入射X線反射率測定の結果では、1次回折ピークにおいて理論値の80%以上という高い反射率が得られているものの、高次の回折ピークに分裂が見られた。これは積層周期に微小なばらつきが生じていることを示しており、回折ピークの分裂幅から見積もられる周期のずれは最大約0.3nmであった。積層周期のずれは成膜中の成膜速度の時間変動によって生じると考ることから、イオンビーム電流、チャンバ圧力、ターゲット温度の安定化を試みた。その結果、高次の回折ピークの半値幅が理論値にほぼ等しく、積層周期の変動が極めて小さい高精度の多層膜が得られ、ピークの半値幅から見積もられる周期のずれは0.6%以内であった。これは膜厚で0.03nmに相当し、高精度で積層周期を制御することができたといえる。
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