Research Abstract |
本研究では,通常のPID制御法で制御できるコンパクトで安価で,応答性が良く高速で,必要に応じて高減衰とできる新しいタイプのばね型アクチュエータを開発した。具体的には,(1)電磁力の解析:電磁場計算については,有限要素法を適用して磁場分布を求め,それより各鉄粉層間に作用する電磁力を計算する解析を行い,その数値計算プログラムを開発した。(2)コイルばねの設計と製作:ばねの内部に多数の鉄粉層を有するばねの応答を求める理論式を作り,その数値計算プログラムを作成し,それに基づき適切なばねを設計した。設計されたばね(ステンレス製)をばね製造会社に外注し,いくつかのコイルばねを製作した。(3)鉄粉層を有するコイルばねの製作:上記で製作したコイルばねの中に,シリコン接着剤にフェライト鉄粉を混入したものを,鉄粉層,発泡スチロール,鉄粉層,・・・と交互に積層し,炉に入れて,シリコンがゴムする温度(約160℃)まで加熱し,鉄粉層と空隙が交互に形成されたコイルばねを得ることができた。(4)ばね型アクチュエータの製作:上記で作成したコイルばねの直径とほぼ同じ直径の鉄心を有する電磁石を作成し,上記ばねを鉄心に接着し,また,ばねの可動部に永久磁石を取り付けたばね型アクチュエータを製作した。(5)ばね型アクチュエータの性能の検査:本アクチュエータの周波数応答特性とステップ応答特性を調べたところ,高次振動の影響が少なく,位置決めおよび振動制御用のアクチュエータとして利用できることが分かった。(6)本アクチュエータの応用:本アクチュエータを用いてPID制御による位置決めを行ったところミクロン精度の位置決めができることを確認した。また,本アクチュエータによる振動絶縁制御に対するコントローラを作り,その性能を調べたところ,従来難しいとされていた低周波数域のみならず,共振域も含む広い周波数域で伝達率をほぼ零とすることができた。
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