Research Abstract |
本年度は,以下の主な3項目について以下の知見を得た. 1.複数の液体容器を有する弾性構造物の制振 (1)二つの矩形容器を有する1自由度の弾性構造物が鉛直方向の正弦励振を受ける場合,構造物と二つの容器内の液面スロッシングの固有振動数の間に1:1:1の同調条件が満たされると,同調点付近では構造物は制振される.しかし,同調条件にずれが生じると,ホップ分岐が生じて定常解が不安定化し,振幅変調現象が発生するため,液体容器の制振性能が損なわれる. (2)二つの矩形容器を有する二層構造物が水平方向の正弦励振を受ける場合,容器が各層に分散して設置されると,励振振幅が大きくなるか,または液位が高くなると,振幅変調現象が現れ,制振性能が損なわれる. 2.一つの液体円筒容器を有する弾性構造物の非線形振動 (1)水平2方向に移動可能な弾性構造物に一つの液体円筒容器が取り付けられ,水平一方向の正弦励振が作用する場合,液面の旋回運動の発生に伴い,弾性構造物にふれ回り振動が生じる. (2)上記1(1)との比較のため,鉛直励振を受ける構造物に一つの液体円筒容器が取り付けられる場合,ホップ分岐等の分岐現象が発生する条件を明らかにした. 3.複数の非線形動吸振器の制振特性 (1)同調点付近では構造物の振幅は極小になるが,新たに二つのピークが現れ,例えば漸軟形の非線形ばねの場合には,共振曲線の左側のピーク付近で,複数の定常解が現れる.これを多重モード振動と呼ぶ.その定常解の個数は,非線形動吸振器の個数nに対し,(2n-1)本の定常解が現れる.このような現象は,一つの非線形動吸振器の場合には発生しない. (2)多重モード振動は,振幅が一定で振動する場合と変調する場合の励振振動数区間に分けられる.非線形動吸振器の個数が増加するにつれ,多重モード振動が発生する励振振動数範囲は広くなるが,振幅変調現象が生じる励振振動数範囲は狭くなる.
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