Research Abstract |
近年の情報化社会の到来に伴い,携帯端末をはじめとする情報機器の多くはより小型,軽量なものが求められる.また,環境問題の意識への高まりから,消費電力の小さい高効率な電子機器の開発が必須となる.このような背景のもと,電子機器の中で電力消費の占める割合が大きいスイッチング電源回路においては,小型・高効率・安定化が特に重要である.一方,現在LSIは微細化の一途を辿っており,その中で電源回路の低電圧,大電流化への傾向は顕著である.LSIの低電圧化は,閾値電圧と供給電圧の差が小さくなり電源電圧の変動に対する余裕が小さくなることを意味し,より安定した出力電源電圧が求められる.この電源電圧の問題が今後LSIの微細化へのボトルネックになることが予想されるため,電源回路の開発は重要性を増してくる.安定した電源電圧を供給するためには,配線に関する問題を極力小さくする必要があり,LSIと電源回路との距離を小さくすることが求められる.この問題へのひとつのアプローチとして,電源もLSIと共にチップ化してしまう,オンチップ電源の実現という発想がある. 本研究では,オンチップ電源の実現を視野に入れ,その基本技術の確立を目的とする.具体的には1V/10Aの設計仕様のもとで,ソフトスイッチング技術としてE級スイッチングを導入することにより10MHzの動作周波数を高効率のもとに達成する.そのために,高周波数高効率を達成できる位相制御型E級コンバータを基本技術として低電圧大電流を実現できる,インターリーブ型位相制御E級dc/dcコンバータを提案し,その基本性能を実験的に明らかにした.さらにオンチップを考慮し,MOFETの寄生容量の非線形性が回路動作に与える影響を解析的,数値的に解析した. さらにその電源回路にディジタル制御を適用し,入力変動,負荷変動に対し複数のパラメータを調整することにより常に出力電圧およびソフトスイッチングを達成する制御法を確立することを研究目的とする.
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