2006 Fiscal Year Annual Research Report
電子ビームプロセシングにおける材料のナノダイナミクス
Project/Area Number |
18560341
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
安田 雅昭 大阪府立大学, 工学研究科, 講師 (30264807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 義彦 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (50285300)
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Keywords | ナノカーボン / カーボンナノチューブ / 電子ビーム / 電子顕微鏡 / 照射効果 / 照射損傷 / 分子動力学 / モンテカルロ法 |
Research Abstract |
高エネルギー照射電子とターゲット材料を構成する原子との相互作用を組み込んだ分子動力学シミュレーションを開発した。電子-原子相互作用のモデル化には散乱断面積に基づくモンテカルロ法を用いた。すなわち、入射電子の散乱角度はラザフォードの弾性散乱断面積を用いて確率的に決定し、衝突された原子へのエネルギーの移行と原子の散乱角度は二体衝突モデルにより決定した。また、衝突原子はランダムに選択した。 開発したシミュレーションを用い、代表なナノ材料である単層カーボンナノチューブの電子ビーム照射下におけるダイナミクスを解析し、以下の結果が得られた。 1.単層カーボンナノチューブに欠陥が生じる入射電子のエネルギーは110keV以上であった。 2.電子ビーム照射下では炭素原子問の結合の切断と再結合が可逆的に起こり、また、叩き出された炭素原子の中には、ナノチューブの他の場所に格子間原子として吸着されるものも見られた。 3.入射電子エネルギーの増加にともない、照射損傷の程度は加速度的に大きくなった。 4.ナノチューブの直径が小さくなるほど、ナノチューブは短時間に元の形状を失った。 5.高温で電子ビーム照射をすると炭素間の結合が切れた後、再結合する頻度が高くなり、アモルファス様のナノチューブへと構造転移していくことが分かった。また、チューブ径は照射前に比べ細くなった。 以上の結果は実験により報告されているものとよく一致しており、本研究において開発したシミュレーションが電子ビーム照射下での材料ダイナミクスをよく再現できていることが確認された。
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