Research Abstract |
高性能で低消費電力な携帯電話・デジタルカメラなどの携帯情報機器を低コストで実現するためには,その部品である「システムLSI」の低コスト化が必要である.得に,少量多品種のシステムLSIを低コスト化するためには,回路転写(フォトリソグラフィー)用の原版(フォトマスク)作成費用を削減することが必須である.本研究では,低コスト化を実現するために,フォトマスクが不必要なLSIパターン形成技術である電子ビームウエハ直接描画技術(EB直描)を用い,本技術に特化した低コストシステムLSI設計技術を開発することを目的としている. EB直描技術は,フォトマスクが不要であるが,実生産で使用するためには,パターン形成に必要な描画時間を飛躍的に短くする必要がある.このためには,複数のパターンを同時に形成できる,部分一括露光方式を使用することが必須である. 本年度は,[1]部分一括露光方式に最適化された,スタンダードセルレイアウト設計技術の研究,[2]EB直描に最適化された,個別生産向け可変論理LSIアーキテクチャ技術の研究[3]「電子印鑑LSI」の公開鍵暗号化ロジックの研究,を実施した. [2]の研究においては,2入力排他的論理和(EXOR)ゲートをアレイ状に敷き詰めロジックエレメントとし,第1ビアレイアのパターンを変更することにより,NAND, AND, NOR, ORなどの2入力のすべての論理を出力できる新しいビアプログラマブルロジックアーキテクチャVPEXを考案した.ロジックエレメント間の配線は第3ビアレイアの変更により自由にプログラムが可能である.[3]の研究では,公開鍵暗号であるRSA暗号の回路において秘密鍵を固定して回路中に埋め込み,秘密鍵の漏洩防止能力が非常に高い回路の検討を行った.同時に,公開鍵暗号を使った電子署名を応用した,個人認証用シングルサインオンシステムを構築して動作の検証を行った.以上3点の研究によりEB直描を用いた少量生産システムLSIの低コスト化に寄与する技術の蓄積をおこなうことができた.
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