2008 Fiscal Year Annual Research Report
海馬神経回路網における新生ニューロンの機能に関する非線形システム理論による研究
Project/Area Number |
18560386
|
Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
安達 雅春 Tokyo Denki University, 工学部, 教授 (20312035)
|
Keywords | システム工学 / 神経科学 / 非線形システム / 新生ニューロン |
Research Abstract |
本研究は、最近実験的な研究成果が公表されてきている哺乳類成体におけるニューロンの新生現象の脳の情報処理における役割について、モデル構築と計算機シミュレーションを通して理論的に明らかにする研究の一環として行う。 本研究では、新生ニューロンの存在を積極的に取り入れたモデルを構築し、その挙動を非線形システム解析の手法を駆使して解析することにより、神経生理学の実験研究にも貢献できうる新生ニューロンの役割に関する仮説を提示することを目的とする。 本年度は、前年度に構築した解剖学的な知見に基づく海馬の神経回路網モデルを基に、新生ニューロンと既存のニューロンとの結合を比較的単純なニューロンの形態形成アルゴリズムによって構築した。このような神経回路モデルにおいて、新生ニューロン発生前後の新旧の記憶の消去・形成に及ぼす影響についてシミュレーション実験を行った。この記憶の形成過程では、スパイク時間依存可塑性と呼ばれる学習則を用いて、学習則における生理学的な正当性を確保した。 その結果、新生ニューロン発生後の追加学習対象パターンの数を増加させると、既存の想起が一定程度阻害される傾向にあるが、追加学習の記憶は獲得されていることが判明した。 さらに、これらの既存・追加記憶パターン数の総数は、新生ニューロン発生前後でほぼ一定であることが判明した。この結果は新生ニューロンが旧い記憶の消去と新規記憶の獲得に寄与していることを示すものと考えられる。
|
Research Products
(2 results)