Research Abstract |
平衡型弾性波デバイスには,フィルタ特性などデバイス本来の機能に加え,平衡-非平衡変換機能や,インピーダンス変換機能があるため,電子回路の部品点数の削減が期待できる.そこで,本年度は,平衡型弾性波デバイスの多機能性に着目し,その多目的最適設計手法を考案し,有用性を検証した. まず,代表的な平衡型弾性波デバイスである平衡型弾性表面波フィルタの構造設計を多目的最適化問題として定式化するとともに,遺伝的アルゴリズム(GA)と,GAと可変近傍探索法(VNS)を組み合わせた遺伝的局所探索法(GLS)を適用し,パレート最適解集合を求めた.また,そのパレート解集合を分析することで,設計パラメータ数を増やして設計の自由度を高めるならば,トレードオフの関係が解消され,複数の異なる性能を同時に改善できる電極構造が得られることを見出した. つぎに,数多くの設計パラメータを有する大規模な最適設計問題に対して有効な最適化手法として,VNSと分割統治法を組み合わせたFree&Freeze法,および,適応的Free&Freeze法を考案した.さらに,幾つかのベンチマーク問題において,二種類のFree&Freeze法と既存のVNSの性能を比較し,新たに考案した最適化手法によれば,VNSで得られる解の精度を大きく損なうことなく,計算時間を大幅に短縮できることを実証した.また,大規模な二重モード弾性表面波フィルタの構造設計において,Free&Freeze法が弾性波デバイスの最適設計問題にも適応可能であることを確認した.
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