2008 Fiscal Year Final Research Report
Studies on analysis and control of attractors for developing biological control theory
Project/Area Number |
18560443
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Research Field |
Control engineering
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
UCHIDA Kenko Waseda University, 理工学術院, 教授 (80063808)
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Project Period (FY) |
2006 – 2008
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Keywords | 制御理論 |
Research Abstract |
生物アトラクター研究の第一歩として生命現象の典型的な例である概日リズムというアトラクターに焦点を絞って研究を進めた。 モデルに基づくシミュレーション・解析を行い現象の特性を解明するためには、モデルの低次元化、単純化が望まれる。生物システムの特徴である環境の変化に対する安定性・定常性の維持機能(ロバスト性)を定量化し、その指標に基づくモデルの選択、低次元や単純化の方法を提案した。モデルに基づく解析を進めるためにはモデリングの議論が先行させる必要があるが、生物のような完成されたシステムに対しては、モデリングと解析は分離して行うことは得策ではない。そこでモデリングの検討と平行して周期軌道などのアトラクターの特性を与えている制御メカニズムの検討を進めた。特に制御メカニズムの検討においては、モジュールやシステム全体における制御の目的をアトラクターの安定性やロバスト性を確保することと捉える立場から研究を遂行した。 モデリングの問題としては、生物システムの複雑・大規模・非線形モデルを対象として、機能を確保できる範囲でモデルの簡略化の方法を提案した。具体的には、分子レベルの概日リズムの生化学反応モデルをについて、リズムを維持する範囲(周期アトラクターの軌道安定性を維持する範囲)で、生化学反応ネットワークの相互チャンネルの重要性を評価し、その評価の順位によってモデルを低次元化するという方法である。制御メカニズムについては、概日リズムの温度補償という制御を実現している速度パラメータを推定するアルゴリズムについて検討した。温度補償性は概日リズムのロバスト性とみることも環境適応性と見ることもできる。本研究では、環境温度の変化に応じてパラメータが変化することにより温度補償性が実現されているという仮説に基づいて、温度補償性を実現するパラメータの温度依存性を決定することに成功した。このようにして構成された概日リズムのモデルは実際の環境温度変化に対して同調性も示すことも確認できた。変異体における温度補償を実現するパラメータ推定についても本手法を適用して、実験結果に合うシミュレーションモデルを得ることに成功した。概日リズムに代表される周期アトラクターを内部にもつ人工物の制御アルゴリズムについても検討し、飛行船モデルを例題としてその構成法を提案した。 これまでに明らかにしてきたアトラクターの適応性・ロバスト性を保証している制御メカニズムについて、想定される様々な変動の中での解析と評価を行った。機能実現にとって有利であることを定量化できる評価関数の探索から始め、生物の備わった制御メカニズムはある評価関数に対して最適なものであるはずであるという仮説のもとで、これまで検討してきた制御メカニズムを最適性の観点から特徴付けを行った。特に、生物の重要な細胞機能の一つである概日リズムについて、そのリズムを最適なアトラクターとして、また最悪条件下の最適なアトラクターとして実現している制御メカニズムがあることを示した。
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