Research Abstract |
成熟した社会では,ストック性の高い,高寿命・リサイクル型の高品質建築を適正な価格で提供することが要求される。本研究では,空間構造を対象として高寿命の維持コスト低価格構造システムの開発を目指し,その構造の地震時被害抑制法,対応する性能設計法(複数モード限界耐力計算法)を研究する。 18年度は,(1)高寿命型自然エネルギー利用型の空間構造策定のため,内外の資料から空間構造の設計例とその設計コンセプトを調査した。免震型骨組膜構造(透光性,2重膜,膜変形自律修正),Schlaich教授等が発展させつつある環境適応型の空間構造などの特徴を分析し,日本における低環境負荷空間構造の設計コンセプト(自律型システム)を検討した。一方,地震に対する高寿命性確保の視点から,支承部・下部構造降伏型耐震要素とその修復工法を考慮したリサイクル型高寿命空間構造を設定する。(2)空間構造の地震時挙動は,研究の進んでいる高層建築と性質が大いに異なる。この異なりを考慮した複数モード型限界耐力計算(水平・上下応答の考慮)を提案し,地震動の入力レベルに応じた支承部・下部構造降伏型構造の性能保証設計法の妥当性を検証した。さらに,設計の効率化を目指し,これを援用して最適パラメータの探索を容易するため,(3)効率的なパラメトリック解析のためのグリッド計算システム(コンピュータを連動利用した計算効率化システム)を構築し,最適パラメータ推定を推進し,構造解析・設計の低廉化・効率化を検討した。これらの研究成果は,日本建築学会構造系論文集,構造工学論文集に投稿するとともに,国際シェル空間構造学会(IASS)の国際シンポジウムにて成果発表を行うことができた。
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