Research Abstract |
本研究は,作業中の身体の安定度を評価することを目的として実験・検討を行うことを主な課題としており,併せて,建設業労働災害の事例分析,身体の安定度実験の精度を高めるために作業者の体力調査を行うものである.本年度の研究実績を以下に示す. (1)災害事例分析 災害事例分析では,作業者の年齢と災害発生率の関係,近年重要視されている熱中症労働災害の要因となる作業環境の調査を中心に行った.年齢と災害発生率の関係は,バスタブ型の傾向であることを示し,高年齢層作業者の増加,景気の回復に伴う新規低年齢層採用増に伴う,危険年齢層の増加という,今後の安全管理上の課題が示された.また,熱中症は気温30℃を超えると発生数が多くなるが,気温30℃を超える日数が増加していること,作業場所により環境が異なり,特に地上部での作業が危険であること,コンクリート水和熱が型枠解体作業に影響することを確認した. (2)身体の安定度分析 身体指標として,身長及び体重から得られるBMIを採用し,また,安定性を評価する指標として足底部の荷重中心の軌跡から得られる指標(L値と記す)を新たに提案し,身体の安定性を評価した.結果,勾配がある面での歩行,運搬重量の増加に伴い,BMIとL値から判断できる作業中の移動に伴う危険性が異なることを示し,提案した指標が安定性評価に有効であることを確認した. (3)労働者の体力調査 筋力,バランス能力に併せて基礎的な身体機能として血圧の測定を加えて,建設工事中の作業所でこれらのデータを収集した.現在約400名の調査を行い約200名について分析を終了した.結果,建設業作業者は,筋力は一般男性より高く筋力が低下する年齢も遅い傾向が認められた.一方,バランス能力は全体的に低いこと,血圧は高血圧と判断される者が多く,作業との関係を検討する必要があることが新た課題として明らかになった.
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