Research Abstract |
昨年に引き続き,幅910mm,高さ2625mmの木造フレームによる実大試験体の載荷試験を行った。昨年の試験体を含め,最終的に基準試験体(2体:F2,F3),分散ボード試験体(2体:HA,HS),配向ボード試験体(1体:HT),配向ボードから発展させた双機構ボード試験体(2体:HO,HW)の計7体の試験データが得られた。その結果から,完全弾塑性モデルの各種数値,等価粘性減衰定数(heq),壁倍率を求めてそれぞれの性能を比較した。その結果,等価耐力,塑性率では,配向ボードと双機構ボードが有効であったが,壁倍率を比較すると,スリットのない一般的な7.5mm厚の面材張り壁(大壁)の壁倍率が2.5であるのに対し,スリットのある5.9mm厚の双機構ボードの壁倍率はHOが2.9,HWが3.3と2割以上の向上が見られた。またHWの減衰定数は,1/120ラジアン時に23%と大きな値を記録した。さらに破壊モードは昨年の検討で明確にした計算式によって検討した結果,計算した通り,HA,HSがせん断圧縮破壊,HT,HO,HWが引張ひび割れ破壊であり,計算式の有効性が確認された。 以上の実験結果を基に詳細な解析を行って,双機構ボードの等価粘性減衰定数と壁倍率が高くなる理由を調べた。その結果,FEM解析による工夫を凝らしたスリットを導入した甲斐があり,ボードの応力場が均一になり,壁部分で最初はトラス機構が働くが,ボードひびわれの進展後,ラーメン機構へ移行する二つの破壊メカニズムを生じさせることが出来たためと判明した。 開発した制振壁部材は,従来の一般的な面材張り壁の壁倍率と比較して20%以上高くなり十分な差異を有している。また等価粘性減衰定数は十分高く,制振壁として,所期の目標を達した。
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