Research Abstract |
本年度は,次の3点に関するシミュレーション実験と分析を行い,コンサートホール空間の幾何的対称性と音場性能の関連について明らかにした。 1.側壁および天井に凹凸のある拡散形状モデル音場における時間-エネルギ特性 2.音響散乱を加味した拡散形状モデル音場における音圧レベル分布特性 3.横断面形状モデル音場における反射音の到来方向分布特性 幾何音響解析プログラムを用いてモデル内観測点におけるインパルス応答を求め,得られたインパルス応答から時間-エネルギ情報(C_<80>,EDT,Strength G,初期音レベルG80,後期音レベルGL),並びに方向-エネルギ情報(LF,方向別反射音エネルギ率ER_L,ER_V,ER_G)を算出し,それらの空間分布特性の変化を空間の幾何特性との関連から考察した。また同時に,音響模型実験手法によりそれらを検証した。空間規模等,モデル室群の基本条件は前年度と同様である。 拡散形状モデル並びに音響散乱モデルにおける検討結果から,非対称平面形状では対称形状に比べ反射音レベルの距離減衰量が小さく,特にGLの空間分布特性が改善される効果を確認した。また,GLの距離減衰率mを算出した結果,非対称度の増加とともにmが小さくなる傾向を明らかにした。これらの結果は,ホール内壁を単純化した形状モデルによる従来の結果と符合するものであり,ホール基本形状の幾何的対称性の影響を示すものである。次に,ホール両側壁の傾斜角を系統的に変化させた横断面形状モデルを対象に検討した。反射音エネルギの方向分布特性について考察した結果,断面形状の非対称度が増すにつれて方向別後期音エネルギ率の空間的なバランスが良くなる傾向を明らかにした。後期音特性は音場の拡散性を強く反映する点からも,非対称形状の効果が示唆されたといえる。今後はさらに,実音場モデルを対象とした実験を進めてゆく予定である。
|