Research Abstract |
小規模地域分散型高齢者居住施設において男女混住の度合いが進行することに伴い,生活上の男女差や男女間のトラブルが発生する傾向が高まり,特に,家事的能力や協調性に乏しい男性高齢者において共同生活不順応傾向や孤立化現象が顕在化している。本研究は,このような状況を踏まえ,小規模地域分散型高齢者居住施設における行動特性の男女差を明らかにすることを目的とし,尼崎市,久留米市,愛知県長久手町にそれぞれ設置された3施設を対象として,それぞれ数日間にわたり,入居者の全生活について追跡観察調査を実施した。 調査から得られた男女の行動特性は次のとおりである。共用空間への来室頻度および滞在時間は,女性に比較して男性が少なく,かつ短い。共用空間での生活行為において,女性は食事はもとより多彩なレクリエーション行為を,しかも集団で行う傾向が強いのに対し,男性は行為の実施率が低く,かつ個人的な行為が多い。他の入居者との会話において,女性は極めて活発であり,相手は同性が大半である。男性は他人との接触が少なく会話の量も少ない。会話の相手は殆ど女性であり,男性同士の会話は皆無に等しい。 空間的行動パターンについては,次の傾向がみられる。共用空間内において主として女性が行動するエリアと男性が行動するエリアが緩やかながら分離されている。女性はエリア内を面的に広く利用する傾向があるが,男性は特定の場所をスポット的に利用する傾向がみられる男性の入居者は,女性の集団に対し,その輪の中に直接参加しようとはしないものの,集団の周辺に位置し,間接的な参加を指向する傾向がみられる。 以上の調査結果より,の行動特性を次のようにまとめることができる。(1)女性の行動における集団化傾向と男性の行動における個人化傾向,(2)女性における面的行動傾向と男性における点的行動傾向,(3)女性の行動領域と男性の行動領域の相対的な分離傾向,(4)男性における女性集団への間接的接触指向。
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