2006 Fiscal Year Annual Research Report
近世故実家による公家住宅研究の実態ならびにその学史的意義に関する研究
Project/Area Number |
18560626
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤田 勝也 関西大学, 工学部, 教授 (80202290)
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Keywords | 建築史・意匠 / 日本史 / 美術史 / 裏松固禅 / 院宮及私第図 |
Research Abstract |
裏松固禅の研究業績に関する史料の収集に集中的に取り組んだ。とくに穂久邇文庫蔵『院宮及私第図』の閲覧が叶い、詳細な調査が行えたことは大きな収穫であった。同史料が『院宮及私第図』巻三冒頭に収められる本槐門新槐門図と同じ内容をもつことから、「槐門図」との呼称で通行していた同史料の重要性があらためて確認できた。『院宮及私第図』については、巻三に収められる「寢殿図」の由来や成立の経緯について詳細に検討を加え、九条家の屋敷に関する指図であること、固禅が元史料をもとに作成したものである可能性が高いこと、九条良経邸との固禅の誤認には、近世九条家における強固な復古の伝統が背景にあることなどを明らかにした。また、沢田名垂が描いた寢殿造鳥瞰図のもとになった図2点、すなわち巻三に収められる「古図 両中門」「両中門図」についても、先の本槐門新槐門図との関連をめぐって検討を加え、両図とも固禅以前の時代に遡る図であって、固禅作成ではないこと、しかし固禅が早くに両図に注目したことが、名垂の寢殿造鳥瞰図につながったという点に、研究史上の意義が見いだせることなどを明らかにした。以上の考察結果などを含む『院宮及私第図』に関する調査研究の成果として、『裏松固禅「院宮及私第図」の研究』を編集・執筆した。これを足がかりに、研究最終年度にあたる次年度は、裏松の他の研究、また関連する他の故実家による住宅研究の実態解明に取り組む予定である。
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Research Products
(3 results)