2006 Fiscal Year Annual Research Report
中央ヨーロッパの木造架構における棟持柱構造の原形と変容に関する形態史的研究
Project/Area Number |
18560627
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
土本 俊和 信州大学, 工学部, 教授 (60247327)
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Keywords | 棟持柱 / 股木 / 切妻 / 寄棟 / 通し柱 / ドイツ南部 / 民家 / 木造 |
Research Abstract |
ドイツ南部を扱った本年度調査は、『中世後期から近世に至る掘立棟持柱構造からの展開過程に関する形態史的研究』(2001-3年度、基盤C2、代表・土本)で行った2001年12月実施調査を受ける。前回はドイツとスイスとオーストリアを扱ったが、今回はエスリンゲンを拠点としてドイツ南部を扱った。拠点に近い野外博物館Freilichtmuseunとエスリンゲンなどの都市で棟持柱構造を調査した。 まず、調査した野外博物館は、(1)Freilichtmuseun Beuren、(2)Schwarzwalder Freilichtmuseun Vogtsbauemhof Gutach、(3)Oberschwabisches Museumsdorf Kreisfreilichtmuseum Kurnbach、(4)Hohenloher Fleilichtmuseun Wackershofenであった。これらのなかで棟持柱構造として特に重視すべきは(1)ボイレン野外博物館Fleilichtmuseun Beulenであった。(1)では、棟下の通し柱、すなわち棟持柱をもつ切妻で平入の納屋を捉えた。(2)シュヴァルツ・ヴァルト野外博物館Schwarzwalder Freilichtmuseunはこの地方にみられる巨大な民家とくに草葺で寄棟の巨大民家のなかに棟持柱をもつ例を捉えた。(3)キュルンバッハ野外博物館でも、(2)と同様に草葺寄棟巨大民家を捉えた。 他方、ファッハヴェルクバウFachwerkbauを中心域に多く遺すエスリンゲンを調査した。現地建築家レーンネルト氏W.Lehnertの紹介をうけ、現地研究者ギョアM.Geor博士から町中で直に教示をうけた。ファッハヴェルクバウは、ゲショスバウGeschossbauとストックバウStockbauに大別される。ゲショスバウで棟持柱構造を指す文献(例えば、Karin Lissner・Wolfgang Rug, Holzbausanierung,2000)があるが、ゲショスGeschossは複数の階にわたって通し柱であることをギョア博士からの説明で会得した。つまり、二階の下部から三階の上部にわたって通っている一本柱をゲショスGeschossとよぶとの見通しを得た。これは大場修氏のいう通柱型に近いといえる。他方、棟持柱構造を直に指す語は複数あって、現在、その整理を進めている。なお、文献から得た貴重な視点として、切妻壁をさすギーベルGiebelとフォークをさすガーベルGabelがさかのぼれば同根であるとの指摘(A.Zippelius, Vormittelalterliche Zimmerungstechnik in Mitteleuropa, Rheinisches Jahrbuch fur Volkskunde 5(7),7-52,1954)がある。これは、妻壁に股木が棟持柱である姿を示す。この姿は、中央ヨーロッパの木造架構の一つの原形といえよう。
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