2008 Fiscal Year Annual Research Report
建設年代の複合した古建築の建築技法・意匠に関する基礎的研究
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18560628
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山岸 常人 Kyoto University, 工学研究科, 准教授 (00142018)
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Keywords | 古建築 / 修理 / 技術 / 意匠 / 文化財 / 加工痕跡 |
Research Abstract |
平成20年度は、兵庫県神河町内および滋賀県旧朽木村において寺社建築の調査を行った。また滋賀県弘誓寺境内および兵庫県鶴林寺本堂についても実測調査を行った。さらに岡山県浄土寺本堂の改修事例の資料を収集した。旧朽木村内の神社は多かれ少なかれ、改修を行った際、ア、従前の部材をそのまま再利用し、イ、形状や意匠を模倣した取替材を用い、ウ、旧位置で再利用する材も転用する材も共に部材の表面を削り直して再利用することを、確実に併用している。このため組物から上がすべて中世の神社本殿や、近世の部材にも拘わらず垂木の反り増しを持つ本殿、見え隠れ部分に削り直す以前の木肌や墨書を残す本殿が複数見いだされた。こうした事例が旧朽木村内に顕著なことから、「建設年代の複合」の現象が地域的な特質となっている場合のあることが判明した。これまで収集した実例を包括的に勘案すると、「部材再利用」「部材削り直し」「形式・意匠の先例模倣」という保存的手法と、修理屋建て替え時点の意匠や技法による新築的手法が混在することがむしろ一般的であり、新築の文化は限定的であったことが浮かび上がる。その傾向は、旧朽木村のように、近代に入っても持続する地域もあった。そしてかかる観点からは、一部の部材についての自然科学的方法による年代判定はきわめて危険な手法であることが浮かび上がる。常に古材は混入しており、それは決してあからさまにではないという点を踏まえて、古建築の評価を行うべきことが明らかとなってきた。同時に、本研究の成果は、文化財保存の場面においても留意して評価し又修理を進めるべきことも示唆している。こうした現象に関する文献的史料を見いだすに至っていないことが、本研究で残された重要な課題である。今後も継続的に本研究の視点からの材料を収集することによって、その歴史的実態がより明確になると考える。
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Research Products
(1 results)