2009 Fiscal Year Annual Research Report
豊臣政権の都市政策として捉えた平入り志向の景観形成に関する研究
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18560632
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮本 雅明 Kyushu University, 芸術工学研究院, 教授 (80128115)
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Keywords | 平入り町家 / 妻入り町家 / 豊臣政権 / 都市政策 / 防長 / 日本海沿岸 / 金沢 / 鹿野市 |
Research Abstract |
本研究は近世都市に卓越する平入り志向の景観形成が、空間や社会の大規模な再編を目指した豊臣政権の都市政策の一環をなしたという仮説の論証を目指すもので、妻入り志向と平入り志向の町並みの地域分布を遡及的に把握し、近出の遺構資料や文献・絵画史料の再検討を通して、既往研究の成果も踏まえつつ社会から空間、さらに日常の生活世界が展開した景観までを貫く総合的な観点から、近世都市における景観形成と豊臣政権の都市政策の実相に迫ることを目的としている。 本年度は、北部九州とともに妻入りと平入り混在する防長において、平入り志向から妻入り志向の町並みへ転じた周防鹿野市を取り上げ、町立て時の町割を示した絵図史料と文献史料、遺構資料の検討を通じて、その転換のメカニズムを明らかにするとともに、日本海沿岸において豊臣政権下に城下町を形成しながら、豊臣政権下に建設されながら空間形成の過程が詳らかではなかった金沢を取り上げ、新出の考古資料と文献史料、既出の絵図史料の再解釈によって、建設当初は豊臣政権下に建設された城下町に備わる空間的特質が達成されていたこと、徳川政権下の都市改造によって、徳川政権下に建設された城下町に備わる空間的特質転じたこと、そこに平入り志向の町並み景観が成立したことを指摘した。 さらに最終成果として、豊臣政権下に建設された城下町では、求心性を志向する全体プランを形成しつつも、面的街区を形成した町人地は均質性を志向した空間を形成し、そこには平入り志向の町並み景観を誘導した都市政策が遂行された可能性のあること、これらの都市政策は主として城下町において遂行され、在方の港町や市町では地域の社会と経済の達成状況、屋根材や地割に規定されつつ技術的要因から妻入り志向と平入り志向の町並み景観が形成されたこと、茅葺き屋根を戴く町家が建ち並ぶ場合は、妻入り志向と平入り志向の町並み景観に、さして都市政策上の相違は見出せないことを明らかにした。
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Research Products
(4 results)