2007 Fiscal Year Annual Research Report
西欧人の見た近世町家の特質と地方性-ライデン博物館所蔵模型の検討を中心に-
Project/Area Number |
18560635
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
波多野 純 Nippon Institute of Technology, 工学部, 教授 (40049721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 憲治 日本工業大学, 工学部, 助手 (30337513)
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Keywords | 町家 / 町家模型 / オランダ / 長崎 / 近世 / 国際情報交換 / ブロムホフ / シーボルト |
Research Abstract |
本研究は、ライデン国立民族学博物館およびシーボルトハウス所蔵の日本の町家模型を通して、近世の町家に関する従来の理解を、西欧人の目という新たな視点を通して見直し、再構築することを目的とする。 18年度の調査によって、シーボルトの町家模型3棟(町家模型(1)、(2)、(3))は、シーボルト『日本』の挿画の様相と正確に一致した。つまり、挿画は、模型を基に描かれたものであり、実際の町家を描写したものではない。いっぽう、プロムホフの町家模型(町家模型(4))を描いた図は発見されていない。 19年度は、3棟のシーボルトの町家模型(町家模型(5)、(6)、(7))について調査を実施した。町家模型(1)、(2)、(3)、(4)とあわせて検討した結果、模型には複数の町家を組み合わせるタイプと単独の町家がある。町家模型(1)+(6)、(2)、(5)は、複数のタイプの町家をつなぎ合わせたものである。そのうち必ず1棟は、入母屋屋根あるいは店が2方向に開くなど、交差点に面して建っ建物が含まれている。なかでも、町家模型(1)+(6)は交差点に建つ建物が二つ含まれている。シーボルトは、日本人の大工に模型の制作を注文するにあたり、単純に町並みの一部を切り取らせたのではなく、いくつかの特徴的なタイプの町家を組み合わせ、町並みの特性と景観を伝えようとしたと考えられる。いっぽう、模型(3)は、単独に成立する構成である。シーボルト『日本』に「屋敷」とあるが、同時に所収されている平面図をみると、庭があり、2階座敷に重点があることから、料亭など接客用の建物と考えられる。つまり、シーボルトは、それぞれに明確な意図をもって模型を制作させるなど、町家の存在様態を理解していた。模型(4)は、発注者が商館長ブロムホフであり、別の意図をもって注文されたと考えられる。その意図とは、町家を割って生活様態を見せるなどの可能性がある。
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