2008 Fiscal Year Annual Research Report
わが国のキリスト教会建築の導入過程に関する比較技術史的研究
Project/Area Number |
18560638
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
林 一馬 Nagasaki Institute of Applied Science, 工学部, 教授 (80086420)
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Keywords | キリスト教会堂 / 建築技術 / ゴシック・リヴァイバル / 導入過程 / 設計図面 |
Research Abstract |
平成20年度においては、海外での現地調査は中国を対象としていたが、公務の都合上、上海地区1回を実現するにとどまった。しかし上海市は中国本土でのキリスト教の布教が最も活発だった地区であり、現在も多くの教会堂遺構が残存する。中でも上海が1842年の南京条約で開港された直後、1844年の黄浦条約で布教の自由を得たフランスが新しく建設した薫家渡天主堂(聖フランシスコ・ザビエル教会、1847〜1853年)は、中国本土における現存最古の教会堂遺構と目されるものだが、その造形はイル・ジェス型と呼ばれる旧来のイエズス会系のスタイルで、構造も純然たる石造であることを確認しえた。これに対し、ゴシック・リヴァイバル系統に属する遺構としては天主教若瑟堂(聖ヨセフ天主堂、1861年創建)や徐家匯天主堂(1910年)、そして西郊の余山天主堂(1925年)がフランス系の特徴を示し、旧聖三一教堂(現・黄浦区人民政府大礼堂、1869年)がイギリス系のヴィクトリアン・ゴシックの事例で、いずれも煉瓦造となっている。また、日本側の調査報告では言及されることが少ないが、上記の余山中腹には旧天主堂(1873年落成)が残存しており、これは中国と西洋の混合様式であることが判明した。こうした遺構群の様態は、わが国のキリスト教会建築の導入過程における様式史的な変遷を考察する上で、極めて示唆深い先行事例であることを確認できたのは、大きな収穫であった。 また、平成18年度の海外調査で発見したパリ外国宣教会本部所蔵の大浦天主堂創建時の設計図面については、昨年度の平面図に引き続き今年度は立面図2葉に関する分析結果を、日本建築学会大会で発表することができた
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Research Products
(3 results)