2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナノチューブ添加複合材料の力学的性質におけるナノサイズ効果
Project/Area Number |
18560665
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩谷 正俊 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助教授 (10196363)
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Keywords | 複合材料 / 破壊靱性 / 小角X線散乱 / 放射光 / カーボンナノチューブ / カーボンブラック / ポリエチレンテレフタラート / クレーズ |
Research Abstract |
従来用いられてきた数マイクロメーターの直径を有する強化繊維を分散させた高分子マトリックス複合材料においては,繊維によるき裂面のブリッジング効果,マトリックスからの繊維の引き抜き,繊維端部でのマトリックスの塑性変形などが破壊強度や破壊エネルギーの増加に寄与することが知られている。一方,ナノメータースケールのフィラーを分散させた系では,フィラーのサイズがマトリックス樹脂の構造要素である結晶子や非晶領域,破壊の前駆構造であるクレーズなどのサイズと同程度であることから,従来の強化材料とは異なる強化機構が発現すると予想される。本研究では,ナノサイズのフィラーによる強化機構を明らかにすることを目的として,カーボンナノチューブやカーボンブラックで強化したポリエチレンテレフタラートの変形・破壊過程における構造変化を放射光小角X線散乱(SAXS)の時分割測定に基づいて解析した。また,本予算で導入した熱分析装置を用いて,これらのフィラーによる結晶核剤効果を検討した。 引張変形過程における試料のSAXS像には,変形によって生じたクレーズに基づくクロス状散乱パターンが観察された。フィーラーの有無及びアスペクト比の相違によって,クロス状散乱パターンに異なる変化が観察された。ナノサイズのフィラーを分散させると,比較的初期に生じたクレーズに変形が集中することを抑制する効果があるり,このことによって破壊靭性が増加することがわかった。アスペクト比の小さなカーボンナノチューブの場合には,応力集中によってフィラー周囲に新たなクレーズが形成しやすいサイトが形成されると推定した,一方,アスペクト比が大きいカーボンナノチューブの場合には,クレーズ内のフィブリル長の増加を抑制する効果があり,これによって新たなクレーズが生じると推定した。
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